映画『きみの色』主題歌はMr.Childrenが担当 中島みゆき、aikoらベテラン勢によるアニメタイアップの深み
現在のJ-POPシーンにおける”ヒット曲のひとつの条件”として、アニメとのタイアップは欠かせない要素となった。YOASOBIの「アイドル」やCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」などはまさしくその好例だろう。日本のアニメ産業が右肩上がりで盛り上がった結果、今やアニメ作品は世代を問わず日本のエンタメシーンにおいて最も重要な存在となり、それに合わせて音楽シーンでもアニメとのタイアップ/コラボレーションが広がりを見せている。そんなアニメ作品とのタイアップの広がりはベテランアーティストたちにも波及している。元々あまりアニメーションタイアップには積極的ではないようなイメージのあるアーティストたちが、近年アニメ作品の主題歌を担当するケースが続いているのだ。 【写真】Mr.Childrenの近影 8月30日に公開となる映画『きみの色』は、『けいおん!』や『聲の形』など“音楽”や“音”、“青春”にまつわる名作を世に放ち続けてきた監督、山田尚子の最新作だ。思春期、青春の真っ只中に生きる少女たちがバンド活動を通して自立、葛藤、恋の模様と向き合う様を描かれるそんな『きみの色』の主題歌を担当するのはMr.Children。『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』『バケモノの子』『映画ドラえもん のび太の新恐竜』に続くアニメ映画主題歌となる。これまでのタイアップを振り返ると『ONE PIECE』では「fanfare」、『バケモノの子』では「Starting Over」、そして『映画ドラえもん』では「Birthday」「君と重ねたモノローグ」と、映画作品に寄り添いながらもMr.Childrenらしさをしっかりと感じさせる作品性の高い楽曲を生み出し続けていることも合わせて記しておきたい。 『きみの色』の主題歌「in the pocket」はMr.Childrenの最新アルバム『miss you』から地続きのミニマムなサウンドでありつつも、青春の衝動や一瞬のときめきがリズミカルに表現された1曲であり、『きみの色』が描く思春期の刹那性が封じ込められている。公式ホームページに掲載されている桜井和寿と本作のプロデューサーである川村元気の“雛鳥”にまつわるエピソード(※1)もMr.Childrenらしさに溢れており、本作の主題歌がMr.Childrenになったことは必然だったのかもしれない、と感じさせてくれる。本楽曲でも、32年のキャリアを経て生み出した唯一無二の“ミスチル色”が『きみの色』の作品世界にそっと寄り添うだろう。 興行収入150億円を突破し、今年最大のヒット作のひとつとなるであろう劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の主題歌はaikoの「相思相愛」。aikoとしても数少ないアニメタイアップであったが、主題歌決定に伴って発表されたaikoのコメントによれば制作スタッフから「自由に作ってほしい」と言われ、この楽曲が生まれたとのこと(※2)。デビュー以来ラブソングを書き続けてきたaikoが、活動を通して得た”ラブソングの作り手”としての信頼を感じるエピソードであるとともに、その信頼に楽曲で見事に応えた彼女の作り手としての矜持にもまた天晴という気持ちになる。「相思相愛」が物語の最終盤で流れ出した瞬間、楽曲とキャラクターたちの恋愛模様の噛み合いっぷりに涙した観客も多かったのではないだろうか。ラブソングと言えば、aiko。そんなアーティストとしての最強の武器をまた大きく更新するようなタイアップとなった。