マリメッコ列車も走る「北欧好き」の聖地。浜松市の山間になぜ?
北欧のライフスタイルを楽しめる施設に
■「北欧」をテーマに20施設が点在 2012年、都田町にある空き家を「なんとかしてほしい」という相談を受けたことから、ドロフィーズキャンパス構想の実現がはじまる。 まず、この空き家をリノベーションして、ドロフィーズインテリアというショップを経営。そこから少しずつ、10年の歳月を経てエリアと事業を拡大してきた。 現在は「北欧」をテーマに、インテリアショップやナチュラルフードを提供するカフェ、ブックストア、アートギャラリー、ホテルなど約20施設が点在。北欧のライフスタイルを楽しむことができる。地域の協力が得られ、約30世帯から土地を借りているという。 「北欧」というテーマは初期から据えていたわけではない。 「身体に優しい素材を使う」「長期間使っても飽きない建物、デザインにする」などといった都田建設の世界観を追求していくなかで、北欧の家具やインテリアにたどり着いた。蓬台氏が実際に北欧に足を運んで文化やデザインを学んだ際に、世界観だけではなく自然との関わり方や思想の近さにも共通項を感じたのだという。 結果、インテリアショップがフィンランドのライフスタイルブランド・マリメッコの正規取扱店になったり、フィンランドからの留学生を受け入れたりと北欧との交流が広がり、“北欧好き”の聖地となった。 ■若者がUターンする町に さらに、駅のリノベーションも手掛ける。 ドロフィーズキャンパスから約10分歩くと、天竜浜名湖鉄道の都田駅という無人駅がある。電車は1時間に1~2本程度しか走らないが、駅の待合室はレトロな木造建築の魅力を残しつつ、一面マリメッコなどの北欧のファブリックパネルで彩られる。 駅のホームには「MIYAKODA駅café」という開放的なカフェも併設し、北欧が好きな女性を中心に賑わう。 2015年からは、電車の内装も手掛け、マリメッコ列車「New スローライフトレイン」を走らすなど、地域を巻き込んだ展開をしている(2021年10月から二代目が運行)。 こうしたまちづくりの影響で、都田町にUターンする人も出てきた。ウェディング事業を立ち上げた人や、店舗を開業した人もいるという。 先日、筆者もドロフィーズキャンバス内にある白いMINKAというホテルに宿泊した。ホテルは満室。注文住宅を建てた人たちへの感謝祭を実施しているタイミングで、ドロフィーズキャンパスは朝から賑わっていた。 都田駅も、電車こそ本数は少ないなかで、若い人たちが多く訪れていた。一歩ずつかもしれないが、10年前に描いた夢が実現しつつあるのかもしれない。
内田 有映