「サッカーは好きだけど、習えない…」父は寝たきり、月収7万…「体験格差」に見る貧困
“私がしているのは子育てではなく、ただただ娘を生かしてるだけ 食べさせて寝かせて日々本当に最低限のことしかできてなくて、一緒に色々遊んだり体験させてあげたり、習い事とか知育とかしてあげたいのにそんな余裕がなくて嫌になる なんで親になろうと思ってしまったんだろう、できると思ったんだろう“ 【写真】貧困で食べ物がない…子どもたちのリアルな声 これはあるSNSに投稿された母親の声だ。 まだ幼い子供のようだが、「体験させてあげる余裕」と書いてある「余裕」には様々なジャンルのものが必要となる。 体験させるためのお金。 体験に送り迎えするための時間や体力 体験するための準備や練習などに付き合う余力 等々……。 大谷翔平選手は、小学3年生のころ野球チームに入ったという。「好き」を大切にされていたことで今に至っている。大谷選手ほどでなくても、「好き」を伸ばしてあげたい、何かを体験させてあげることで、子どもの「好き」を見つけたい、子どもの能力を伸ばしたい――。 そう思う親は多いことだろう。 しかし、体験させてあげたくてもさせられない保護者も少なくない。 様々な「体験」は、無理やりやらされているのではない限り、その子の好きを見つけたり、得意なものを見つけたり、誰かと一緒に何かに挑む喜びを得たりと様々な利点がある。 だが、そういう体験のできるできないの「格差」が、家庭環境によって大きいのだ。その現実を、データや具体例とともに伝え、子どもにとって「体験」がどうして大切なのかも伝えているのが、今井悠介さんの『体験格差』(講談社現代新書)だ。 今井さんたちの調査は2022年12月に文部科学省の記者会見にて発表された。 「低所得者層の小学生の約3人に1人が「1年間体験ゼロ」」 その衝撃的な内容は多くのメディアで報じられた。 SNSに投稿した母親は、「してあげたい」という思いが強いからこそこの投稿をしているのだろう。そんな優しい母親なのに、自分を責めてしまっている。そういう保護者を孤独にせず、体験を多くの子にさせてあげられる社会にはどうしたらできるのか。 貧困問題によって、子どもの体験が制限されている現状を抜粋により紹介する第1回は、あるシングルマザーの実体験をご紹介する。