なぜ日本代表MF田中碧は約6億4600万円の移籍金で英2部古豪リーズとの契約を決断したのか?
記事には川崎時代のチームメイトで、幼なじみでもあるMF三笘薫(27、ブライトン)による“三笘の1ミリ”から田中が決めた、スペイン代表とのカタールW杯グループステージ最終戦で世界中から注目された決勝ゴールの映像も添付されている。 小学生年代から川崎のアカデミーで育った田中は、2017年にトップチームへ昇格。東京五輪直前の2021年6月にデュッセルドルフへ期限付き移籍し、翌年4月には完全移籍へ移行した。しかし、1部への昇格はかなわなかった。 特に昨シーズンは2部で3位に入り、1部16位のボーフムとの入れ替えプレーオフに進出。敵地での第1戦を3-0で制しながらホームでの第2戦を0-3で落とし、延長戦をへて突入したPK戦で敗れて5年ぶりの1部昇格を逃していた。 新天地リーズもイングランド2部にあたるチャンピオンシップを戦っている。ただ、プレミアリーグからの降格クラブと、昇格を目指すクラブが混在するチャンピオンシップのレベルは非常に高く、ヨーロッパの5大リーグに続くセカンドグループに、ポルトガルやオランダとともに各国の2部リーグでは唯一、名を連ねている。 テクニックやスピードだけでなく、デュエルの局面における激しい肉弾戦も求められるチャンピオンシップは24クラブで構成され、1チームあたり46試合を戦う長丁場のシーズンで上位2位までがプレミアリーグへ自動昇格。3位から6位までの4クラブが昇格プレーオフへ進出し、昇格へ向けた最後の1枠を争う。 昨シーズンのリーズは、チャンピオンシップで一時は自動昇格圏内につけながら終盤戦で失速。3位で進出した昇格プレーオフで決勝進出を果たすも、サウサンプトンに0-1で敗れ、1年でのプレミアリーグ復帰を逃している。 田中を含めて、今シーズンのチャンピオンシップには、8クラブに8人の日本人選手が所属。そのなかには今夏のパリ五輪に出場したMF斉藤光毅(23、クイーンズパーク・レンジャーズ)やMF平河悠(23、ブリストル・シティ)も含まれる。 今夏の移籍市場が閉じた30日には田中に続いて、MF瀬古樹(26、前川崎)のストーク・シティ移籍が合意に達した。さらにチャンピオンシップから3部にあたるEFLリーグ1に降格したバーミンガム・シティで、今シーズンの開幕を迎えていたMF三好康児(27)も同日に、ブンデスリーガ1部のボーフムへ移籍している。 3部から1部への移籍は、そのままイングランドの下部リーグのレベルの高さを物語っている。ヨーロッパへ新天地を求めて4シーズン目。待ち焦がれてきたステップアップを果たした田中は、先述の『LUTV』の最後をこんな言葉で締めている。 「リーズのサポーターとスタジアムの雰囲気が本当に素晴らしいと、誰もが言っている。そのみなさんの前でプレーできるのが、いまから待ちきれません。多くのサポーターと一緒に、スタジアムで勝利を味わっていきたい」 プレミアリーグが創設されるまで、イングランドのトップカテゴリーにランクされていたフットボールリーグで、リーズは通算3度の優勝を誇る。1971-72シーズンには伝統のFAカップも制した古豪ではじまる新たなチャレンジを、田中は日本代表として招集されている9月上旬のアジア最終予選後に満を持して加速させていく。