ホログラムも鮮やかに20年ぶりデザイン刷新「最新技術はすごい」「記念になる」「やっぱり現金がいい!」 新紙幣に市民も高揚、日本経済への追い風も期待 鹿児島・宮崎には340億円分引き渡し
日銀は3日、約20年ぶりにデザインを刷新した紙幣を発行した。初日は日銀から金融機関に3種類で計1兆6000億円分(計2億8000万枚)、日銀鹿児島支店(鹿児島市)でも約340億円分を鹿児島・宮崎両県の金融機関へ引き渡した。 【写真】民間金融機関への引き渡しのため、輸送車に積み込まれる新紙幣=3日午前、鹿児島市の日銀鹿児島支店
新紙幣は偽造防止のため、肖像の3D画像が回転するように見えるホログラム技術を世界で初めて取り入れた。旧紙幣も引き続き使える。 鹿児島市の一部金融機関の窓口では、同日正午過ぎから、「新顔」がお目見え。さっそく両替する姿が見られた。今後は順次、各金融機関窓口やATMなどを通じて世の中に行き渡る。一方で、自動販売機や券売機などでは、新紙幣への対応が一部で遅れている。 日銀鹿児島支店では同日午前8時ごろから、県内の金融機関へ新札の受け渡しを開始。日銀職員の合図とともに金融機関担当者が金種ごとに紙幣千枚の束を10個、計1万枚をまとめた包装(約10キロ)の数を慎重に確認し、厳重に警備された現金輸送車で運び出した。 この日引き渡した360億円は、同支店が2023年に支払った1日平均金額の8倍という。矢野正康支店長(48)は「経済を支える潤滑油になるよう、円滑な流通に万全を期す。鹿児島のみなさんにも新しい日本銀行券に慣れ親しんでほしい」と話した。
1万円札は、1984年から約40年にわたり顔を務めた福沢諭吉と交代し、日本の資本主義の父とされる実業家の渋沢栄一になる。5000円札は樋口一葉から女性教育の先駆けとなった津田梅子、1000円札は野口英世から近代医学の基礎を築いた北里柴三郎にそれぞれ変更する。裏面は1万円札が東京駅丸の内駅舎、5000円札が藤の花、1000円札に葛飾北斎の富嶽(ふがく)三十六景「神奈川沖浪裏」が採用された。新紙幣は2025年3月末までに74億8000万枚を印刷する予定。 前回の紙幣刷新は04年11月1日。発行開始から1年で世の中に流通する紙幣の6割程度が入れ替わった。 鹿児島市金生町の鹿児島銀行本店では3日正午ごろから、新しい紙幣での現金の払い出しや両替を開始した。いち早く新札を手にした客らは、角度によって肖像が回転する3Dホログラムを眺め、「最新技術はすごい」「記念になる」と感動した様子だった。 同市松原町の自営業男性(52)は、午前11時から同店で待機して1番目に新紙幣を手に入れた。「記念に取っておく。これを機に日本の経済が上向いてほしい」と期待した。
紙幣をじっくり見ていた同市武岡2丁目の会社員男性(35)は「ホログラムが立体的できれい。今日が誕生日の妻に渡して記念にしたい」。同市住吉町の自営業女性(47)は「日本の技術はすごい。キャッシュレスが普及しているけれど、やっぱり現金がいい」と話した。 「新紙幣発表から5年間待ったかいがあった」と喜ぶのは、同市牟礼岡3丁目の会社員男性(25)。学生時代に行政主催のコンテストで、新紙幣に関連する場所をめぐる旅行を企画し最優秀賞に選ばれた。思い入れが強く「持って手が震えた。会社で自慢します」と笑った。
南日本新聞 | 鹿児島