労働時間を変えずに1.5倍の成果を出す、うまい手の抜き方(滝川徹 時短コンサルタント)
■全ての仕事を完璧にこなすことをあきらめよう
「考え方はわかった。だが、たとえあまり価値を生み出さないとしても仕事で手を抜くことに抵抗がある」。そういう人もいるだろう。気持ちはわかる。誤解しないでほしいのだが、私は仕事を丁寧に行うことを否定しているわけじゃない。これは仕事の生産性を高めて効率良く進めるために「何を優先するか?」という話なのだ。 限られた時間で最大の成果をあげたいと考えるなら、全ての仕事を完璧にこなすことをあきらめなければならない。これがリスクとスピードはトレードオフであるということだ。生産性が悪い仕事を捨てる勇気が必要になる。 つまるところ、80対20の法則が実践されない理由もここにある。けっきょくみんな捨てる勇気がもてないのだ。全ての仕事をきちんとこなして、かつ、生産性高く働きたいと思っている(昔の私も当然そうだった)。 はっきり言おう。それは無理だ! 全てを手に入れようとする人は、結局何も手にすることができない。「仕事をきちんとこなす、かつ、生産性高く働く」を目指す人は例外なく長時間労働に陥る。そもそも現在の業務に時間的にも心理的にも余裕がある人は本書を手にとっていないだろう。本書を読んでくれている方は、自分の仕事の進め方を改善したいと思っている人だ。ならば断言する。君の考え方を変えることこそ、スタートラインである。 さて、ここまでくれば80対20の法則を活用して仕事をしたほうがいいことは君もわかってきたと思う。では具体的にどうやって重要な2割の仕事を見極めるのか。説明しよう。
■2割の重要な仕事の見極め方
たとえば君が営業の仕事をしているなら話は簡単だ。売上の8割を生み出している“2割の顧客”を特定すればよい。営業職なら売上の実績を見るまでもなく明白だろう。だが、簡単に特定できない仕事の場合はどうすればよいか。 その場合は上司から評価された過去の仕事のことを思い出そう。人事評価制度があれば、それを活用できる。そこではどんなことが評価されていただろうか。評価制度がない場合、仕事の成果の8割は2割の仕事が生み出しているという前提で上司からのフィードバックを思い返してみよう。「本当に、この仕事はよくやってくれた」と労われるような仕事は数えるほどしかないはずだ。このことに気がつくことが出発点になる。 2割の重要な仕事が特定できたら次は生産性の高くない残りの8割の仕事にかける時間と労力を最小限に抑えるよう意識しよう。繰り返すが、ここがミソだ。たとえば君が主動の「勉強会を開催する」というタスクがあるとする。もしこのタスクが重要な2割に該当しない場合、いかに時間と労力をかけずにこの勉強会の用件を満たすことができるか。考えるのだ。 やみくもにパワーポイントで資料作りをはじめてはいけない。「労力をかけない」という視点で考えれば、ワードにポイントを箇条書きにした資料でもよいだろう。パワポで資料作りに慣れている人には勇気がいるかもしれない。でも試す価値はある。 もし万が一「なぜきちんとした資料じゃないのか」という批判を浴びたとしても(そんなことが起こりうるとはとても思えない)、ワードに書いた要点で事足りているし、そもそもそのタスクは価値を生まない8割の仕事だ。よってダメージは少ない。 何度も言うが、全てを手に入れることはできない。生産性高く働きたいなら価値を生まない8割の仕事にかける時間と労力をいかに減らすことができるか。これがカギとなる。これには知恵と勇気が試される。健闘を祈る。