<女子ボクシング>V15の小関が女子世界記録に王手
女子プロボクシングのWBC女子世界アトム級、IBF女子世界ライトフライ級のダブル世界戦が19日、後楽園で行われ、それぞれ王者の小関桃(32歳、青木)、柴田直子(33歳、ワールド)が防衛に成功した。WBC王者の小関は、これが15度目の防衛。女子の連続防衛の世界記録である16に王手をかけた。指名試合をクリアすれば、WBA世界ライトミニフライ級王者の宮尾綾香(31歳、大橋)をターゲットに日本女子初となる統一王者を狙いたいというプランを練っている。
「磨いてきた」という角度の鋭い左のボディアッパーが炸裂した。腰をくの字に折り曲げたフィリピン人の挑戦者は、小関桃の猛撃を受けて、たまらずロープに手をやって横を向いた。アイサー・アリコ(23)は、かろうじて立ってはいたが、下を向いたままレフェリーの10カウントを聞いた。そしてコーナーに座ると号泣した。 2ラウンド、1分29秒。15度目の防衛をKOで決めた小関は、相変わらず控え目で派手に喜びを表現することもなく、「もうちょっとやりかった」と小さい声で言った。 この挑戦者は、昨年、WBC世界ミニフライ王者の黒木優子(YUKO)に前歯を折られて3回TKO負けしている。小関は、「私は3回までに倒すなんて思いません。でも判定で勝っているようでは駄目」と、試合前に語っていたが、その黒木の記録を1ラウンド上回って世界ベルト連続防衛の国内記録保持者の意地を見せた。 「もうちょっと、やりたかった」の裏には、練習の成果を確かめたかったという思いがあった。パワーアップを図るための野球のバットを使った素振りや、パンチのバリエーションを増やすためにドラム型のミットを使った練習を取り入れてきた。KOにつなげた左ボディアッパーも、このミット打ちで磨いたものである。 もう33歳。常に「負ければ引退」という十字架を背負いながら、防衛記録を伸ばしてきた。具志堅用高氏の持つ「13」という連続防衛記録と比べられることを「具志堅さんに失礼だし、数字がプレッシャーになってきた」と避けてきたが、女子の世界記録となると話は別である。 現在、女子ボクシング界のスーパースター的存在で、ウェルター級の4団体の統一王者である、セシリア・ブレークフス(ノルウェー)が「16」に連続防衛の世界記録を伸ばしているが、「連続記録のことはいつも忘れているんですが、尊敬する人の記録を追うことで少しでも日本の女子ボクシングが話題になってくれればいい」と小関は言う。