大谷翔平、ドジャースで”走塁革命”も…?データでみえた覚醒の理由。スピードはMLBトップ100以下に!?
トップスピードは意外な数字に…
大谷選手の走塁の特徴を米分析サイト『Baseball Savant』の数値データからまとめると、以下のようになる。 「トップスピードは速くないがスタートダッシュが良いために全体として速い」 『Baseball Savant』から引用した、6月2日終了時点における“Sprint Speed“の一覧の図を以下に示す。これは、簡単に言えば走塁中のトップスピードに相当する。大谷選手の箇所にはマークを付けている。 大谷翔平選手の数値は秒速28.1フィート(時速換算で30.8㎞)と、MLB平均(秒速27.0フィート、時速換算で29.6㎞)を上回るものの、飛びぬけて速い部類には入らない。 MLB全体ではトップ100にも入っておらず、日本人野手であるシカゴ・カブスの鈴木誠也選手よりも遅い。日本人ファンの目線では、イメージよりも遅くて驚く人もいるかもしれない。
走塁は「足の速さ」だけじゃない…?
走塁のトップスピードだけを見ると、意外にも突出しているとは言えない数字だった大谷選手。しかし、「HP to 1B」(打席から1塁に到達する時間)になるとがらりと変わる。大谷選手のこの指標は4.10秒とMLB全体で4位にランクされる。トップスピードは遅いのに全体のスピードは速い。なぜだろうか。 その秘訣の1つは、走塁のスタートダッシュのよさ、言い換えれば初速の高さにあるようだ。『Baseball Savant』では、「90ft Running Splits」という塁間距離にあたる90フィート(27.431m)の走行時間を示している。 この数字は5フィート(1.5m)刻みでも出されている。大谷選手の「90ft Running Splits」はMLB全体ではベスト30(※)に入る3.83秒を示しているほか、5フィートまでの時間は0.51秒、10フィートまでの時間は0.80秒と、ともにMLBでベスト5に入る速さになっている。 これ以外にも、打ってから走塁に入るまでの動作の速さのほか、一塁までの距離が右打者より近い左打者であることが影響している可能性がある。 (※:上記デラクルーズ選手のようなスイッチヒッターの場合、左打席・右打席の2通りの数字がある。左右両打席ごとに1人、合計2人としてカウントされている) これまで取り上げた選手の主要指標を比較すると以下のようになる。 大谷選手の倍以上の盗塁を記録しているデラクルーズ選手の打席から1塁までの到達時間は、スイッチヒッターであり右打席を含むこともあって、実は大谷選手より長い。 一方、塁間の速度はデラクルーズ選手の方が速い。このように、複数の指標から走塁の中でも得意不得意が見えてくる。 MLBの盗塁・走塁に関する指標は打撃に比べてまだ少ないが、視点を変えると面白い傾向が出てくる。今後のデータ分析の進行や新指標の開発で大谷選手の盗塁・走塁の技術がどのように浮かび上がるか、興味深い。また、今後の大谷選手の活躍が、走塁に関しても新たな視点や面白さを提供してくれるはずだ。
ベースボールチャンネル編集部