『Gマジンガー』主人公のモミアゲが細くなったワケ 大ヒットに垣間見る制作陣の苦悩
完璧過ぎた『グレートマジンガー』の主人公「剣鉄也」はなぜ戦力外に?
1974年9月1日、TVアニメ『マジンガーZ』最終回において、主人公の「兜甲児」および彼の駆る巨大ロボ「マジンガーZ」は、強大な敵に大苦戦していました。そこへ「剣鉄也」の搭乗する新型ロボ「グレートマジンガー」が現れ、この敵をものの数十秒で倒し、圧倒的な格の違いを見せつけます。その後、甲児はロボット工学を学ぶためにアメリカに渡り、鉄也は次の週から始まったTVアニメ『グレートマジンガー』にて主人公を務めるのでした。半世紀が経過してもなお語り継がれる、衝撃的かつ鮮やかすぎる主人公交代劇の顛末です。 【画像】「より強く、美しい完全なロボット」ため息すら出そうな「グレートマジンガー」をじっくり眺める(12枚) ところが鉄也はその後、どうにも主人公らしからぬ「扱いの悪さ」が垣間見られるようになります。それはいわゆる「やらかし」のエピソードに加え、「グレートマジンガー」をタイトルに冠した劇場作品にもかかわらず出番がなかったことまであるほどです。劇場版や後の番組などに引っ張りだこだった甲児に対し、なぜ鉄也はそのように不遇だったのでしょうか。 空を飛べず水中も苦手な「マジンガーZ」が徐々にパワーアップしていったのに対し、「グレートマジンガー」は最初から空を飛べる完璧な存在です。鉄也自身も甲児の父である「兜剣造」博士に孤児院から引き取られ、「グレートマジンガー」に乗るパイロットとして長年、訓練を受けてきたプロフェッショナルでした。訓練なしで「マジンガーZ」に乗り込み、手探りで操縦を覚えていった甲児とはまるで違います。 原作者の永井豪先生は「魔神聖書 マジンガー・バイブル」(双葉社)のなかで、「グレートを作るときには『とにかくZの弱点をすべて補うもの』ということを念頭に置いていました。より強く、美しい完全なロボットを生み出したつもりだったんですが、(中略)グレートがあまりにも完全なものになり、鉄也ともども冷淡な印象しか与えなかったのです」と語っています。 国民的アニメ『ドラえもん』で例えると、「のび太」に代わって「出木杉」が主人公になるようなものでしょうか。欠点がなさ過ぎて「ドラえもん」の出番もなさそうです。 永井先生は続けて、「やはりアニメやマンガのキャラクターというものはどこかしらに欠点があり、それを克服していく要素を入れ込まなければいけないのでしょう」とも話しています。その完璧過ぎた鉄也のキャラクターには、物語の途中で修正が加えられており、22歳だった年齢設定は若い視聴者とのギャップがあるとして第19話から18歳に変更し、太いもみあげも細くなりました。 さらに、勝ち負けにこだわるあまりに、協調性を欠いて大きな失敗を招くという欠点が加わりました。 たとえば第32話「鉄也よ解け!! 心の謎を…!!」では、小学校時代、カナリヤを飼う親友の「サブロー」に対抗意識を持った鉄也が鷹をペットにし、あろうことかサブローがその鷹に目を突かれて失明、トラウマを抱えた鉄也は自ら記憶を封印していた、というエピソードが描かれました。 また同時期に上映された1975年春の「東映まんがまつり」の1作『グレートマジンガー対ゲッターロボ』では、「ゲッターロボ」のパイロットたちに対抗意識を燃やして功を焦ったために、かえってピンチを招いています。