築地にツインタワー案も 市場問題PTの報告書は6月以降に
豊洲市場の移転問題を話し合う東京都の「市場問題プロジェクトチーム」(PT)は24日、9回目の会合を開き、豊洲移転と築地改修の2案を盛り込んだ報告書案について意見を交換した。小島敏郎座長(青山学院大学元教授)は、6月5日に再度会合を開いて報告書をまとめる考えを示した。 【中継録画】豊洲移転問題で都の市場PTが第9回会合 報告書案を議論
豊洲市場の無害化問題に言及
この報告書は、小池百合子知事が築地市場の豊洲への移転是非を判断する上で重要な判断材料と位置付けられている。当初は今月中に報告書を知事に提出する予定だったが、小島座長は、都の市場当局などに求めていた資料提供の遅れにより報告書案の精度が上がらず、来月以降にずれ込むことになった。 報告書案では、豊洲市場に移転した場合、市場会計全体の赤字は年々増え続け、約60年後に累積赤字が8000億円に達する可能性があると指摘。開場後の市場会計が健全ではなく、持続可能性もないため、豊洲に移転する場合は、市場当局が速やかに財源確保の方策を示すべきだとした。 豊洲市場の土壌汚染対策については専門家会議の審議結果を待つとしたが、市場当局に対して、土壌や地下水の汚染物質を環境基準以下にする「無害化」の達成を目指すなら具体的な方策を、目指さないなら無害化に代わる新たな安心・安全の基準をそれぞれ示すべきだとも記している。
「優れている」表現に異論も
一方、築地市場の改修案については、2つの選択肢を提示。築地ブランドや銀座などに近い立地条件を生かし、ツインタワーを敷地内に建設する案としない案を併記した。ツインタワーを建設する場合は、これによるオフィス賃料収入などを得て、自立的な経営を図るとした。 改修工事については、工期7年、総工費約852億円と見込んだ。これに対し、建築士の佐藤尚巳委員(佐藤尚巳建築研究所代表)は「調査、基本計画立案で3~4年かかるほか、地下埋設物や土壌汚染の調査も更地にした後になるので、トータルであと7年は伸びるのではないか」と指摘した。 報告書案のまとめ部分には「(豊洲市場が建設されていないと仮定した)白地(しらじ)で考えれば、築地改修案が優れている」と記載。この表現に対して委員から異議が出たが、小島座長は「まったくの白地ならば、という意味。今、使用料収入が110億円なのに、6000億円かけて新市場は作らないだろう。(豊洲と築地の)どちらが良いという判断はしていない。判断材料をもれなく挙げるのが仕事」と強調した。 (取材・文:具志堅浩二)