低年金のため、清掃の仕事を続ける札幌市西区の女性（74）。「帰宅したら疲れ切っている。いつまで働けるのか」と不安を抱える

　年金が受給できる65歳以降も働く高齢者が道内でも増加している。背景には健康づくりや社会参加といった理由だけでなく、「低年金」のため、働かざるを得ない現実がある。道内の年金受給者約1500人を対象に、市民団体が今年初めて実施したアンケートでは、9割が物価高の影響を受け、年金が不足していると回答した。不足分を補うため、働くケースが増える中、高齢者の労災事故が20年前から倍増するなど、安心して働ける環境整備は追いついていない。 　　札幌市西区のアパートで1人で暮らす女性（74）は、清掃アルバイトとして週5日働く。給料は月5万円で、年金の4万5千円と合わせて10万円に満たず、ほとんどが家賃と生活費に消える。女性は「バイトをもう一つ増やしたいが、気力も体力も限界」と話す。 　女性は高校を卒業後、自治体職員として働き、結婚を機に23歳で退職した。その後、30代で離婚し、アルバイトを転々としたため、受給額は少ない。女性は今春、通勤中に自転車で転んだことがあり、「大けがでもして働けなくなったら生活していけない」と不安を抱える。 　高齢世帯の中でも、単身女性の低年金は深刻で、現役時代の低賃金や就業期間の短さが要因となっている。厚生労働省によると、2022年の公的年金の平均受給額は男性の6割が1カ月15万円以上なのに対し、女性の6割は10万円未満だった。 　年金生活者の暮らしに打撃を与えているのが、長引く物価高だ。フードバンク事業を運営するNPO法人札幌市福祉生活支援センターには、食料品が相次いで値上がりした今春以降、高齢の新規利用者が毎月10件ほど相談に訪れている。