もうすぐ発売!Meta Quest 3Sは結局買いなのか?Meta体験会での結論とは
いよいよ10/15に「Meta Quest 3S」が発売されます。比較的手頃な価格で買えるMRヘッドセットとして気になっている読者も多いでしょう。 【画像全8枚】 1年前「Meta Quest 3」が発売され、初のコンシューマ向けMRヘッドセットとして興味を持つ人も多かったのですが、128GBモデルで74,800円という価格がハードルでした。 今回、Meta Quest 3Sの128GBモデルが48,400円と1年前のMeta Quest 3の約35%オフにあたる価格で発売されることで、「今度こそ買ってみようか」と思う人も多いはずです。 しかし、Meta Quest 3も同時に少し値下げされました。VRやMRに詳しい人ほど「どうせ買うならMeta Quest 3」と言います。Meta Quest 3Sの液晶やレンズがMeta Quest 2に近いことや深度センサーが省略されたことを不安に思っている人もいるでしょう。 今回はMeta が開催した取材&体験会を元に、Meta Quest 3Sがどのくらいお買い得なのか考えてみました。 ◆Meta Quest 2、3、3Sの関係は? ここでMeta Questシリーズについておさらいしておきましょう。 2019年に発売された「Oculus Quest」はゲーミングPCやベースステーションを必要としない世界初の完全スタンドアロンの6DoFのVRヘッドセットでした(6DoFとは頭部の前後・左右・回転で3つ、さらに身体の前後・左右・上下で3つの計6つの動きを感知できることです)。 翌2020年に発売された「Oculus Quest 2」はクアルコムの統合型XR用SoC 「Snapdragon XR2 Gen1」とフレネルレンズを組み合わせて、手軽で完成度の高いVRヘッドセットとして、全世界で累計1300万台を超える大ヒット製品となりました(2021年にFacebookがMetaに社名を変えたことで製品名が「Meta Quest 2」になりました)。 2023年に発売されたQuest 3は、GPU性能とAI性能を大幅に強化した「Snapdragon XR2 Gen2」と、薄くてスイートスポット(鮮明に見える視界)が広いパンケーキレンズ、そして両目で4K+相当の高解像度LEDによってVRの体験を大幅に向上させました。 さらに高解像度のRGBカメラと深度センサーを搭載することで、ユーザー周囲の環境を認識してCGのキャラクターやオブジェクトをそこに存在するかのように合成して表示したり操作したりできる「MR」(Mixed Reality)を実現した初のコンシューマ向けヘッドセットでもあります。 Quest 3の売上は好調で、Questシリーズの開発部門であるReality Labsに大きな売り上げをもたらしたと発表されました。Reality LabsはXRヘッドセットを普及させるキラーソリューションとしてMRに注力しており、Quest 3の成功はこれを後押しする形となりました。 しかし、売り上げ台数ベースでの主力は低価格なQuest 2でした。MRの普及をさらに進めるためには、このギャップを埋める必要があります。これを実現するために投入されたのがQuest 3Sです。 ◆深度センサーが省かれたことはMR体験に影響しない Quest 3Sは、わかりやすい廉価版のQuest 3です。SoCと搭載メモリ量、そしてRGBカメラの解像度はQuest 3と同じです。ディスプレイの解像度はQuest 2と同じ。レンズもQuest 2と同じフレネルレンズですが視野角はQuest2よりやや向上しています。 ポイントのひとつは、Quest 3のMR機能を支える深度センサーが3Sには搭載されていないことです。深度センサーはMRにおいて周囲の空間を正確に認識するための重要なパーツですが、コストが高いため2022年発売の高級機「Meta Quest Pro」では最終的に搭載が見送られた経緯もあります。 この深度センサーを省略して代わりに強力に赤外線を照射する「フラッドLEDライト」を搭載し、XR2 Gen2の強力なAIパワーで補助することで、Quest 3とまったく変わらないMRのユーザー体験を実現していると、Metaのプロダクトマネージャーは語りました。 深度センサーを省略されたことがQuest 3Sの性能に影響しないとすると、Quest 3と3Sの大きな差は表示系のLCDの解像度とレンズの視野角ということになります。 スペックの数字で比較すると、Quest 3が片目2064×2208ドット、角密度25PPD、視野角が水平110度&垂直96度なのに対し、Quest 3Sは片目1832×1920ドット、角密度20PPD、視野角が水平96度&垂直90度となっています。 これが実際の体感でどれくらいの違いとなるのでしょうか? 今回、Quest 3Sで最初に体験したのは発売されたばかりの『機動戦士ガンダム:銀灰の幻影』でした。Meta Quest シリーズ専用に制作された世界初の長編VRムービーです。著者は既に自宅のQuest 3で体験済みだったので早速比較しました。 オープニング映像が始まったとたん、「十分にキレイだけど、Quest 3に比べると少し解像度が低いな」と思いました。しかし、その差はコンテンツに没入していくに従って気にならなくなりました。 厳密に比べれば、3と3Sの解像度や視野角には明らかに差があると思います。しかし、3S単体で使う分には不満が出ることはあまりないでしょう。 ◆スピーカーの音質と空間オーディオ、パンケーキレンズとフレネルレンズの違い 帰宅してからQuest 2で『銀灰の幻影』を試して見たところ、映像よりも音質の差が気になりました。Quest 3で大幅に改善されたスピーカーの音質は、Quest 3Sにも引き継がれているようで、この点も3Sの魅力です。 今回、Questシリーズが正式にDolby Atmosの空間オーディオに対応して、これもQuest 3Sで体験しました。音声プレイヤーの2Dウィンドウを移動させると、音が聞こえてくる方向が明確に変わります。自宅のQuest 2でも体験会のデモとは異なりますがDolby Atmosのデモアプリを入れて体験してみましたが、やはりそもそものスピーカー音質に大きな差があると感じました。 3と3Sの違いでもうひとつ気になるのがパンケーキレンズとフレネルレンズによる本体の厚みの違いです。3Sのほうが3よりも1~2cm厚く見えます。本体重量は両者ほとんど変わらないが、3Sのほうがバランスが悪いのではないでしょうか? 今回の体験ではすべてMeta純正のエリートストラップ付きだったのですが、これを付けている限り、Quest 3Sを装着していてバランスの悪さを感じることはありませんでした。 MR版のマルチプレイヤーFPSゲーム『SPATIAL OPS』(今秋発売予定)の体験では、参加者全員で撃ち合ったりNPCと戦ったりしましたが、MRの空間認識という点でも、ヘッドセットの重量バランスという点でも不満はなく、短い時間でしたが楽しめました。 Meta Quest 3Sで楽しめるVRやMRコンテンツには、ゲームのほかに、フィットネス、お絵描き、楽器演奏、語学学習、仕事用のビジネスツールなどがあります。そのなかでも、ゲームに次いで人気なのがフィットネス分野です。ゲームでも『Beat Saber』に代表されるリズムゲームはVRゲームの人気分野のひとつでフィットネス効果が期待される面もありますが、より本格的なフィットネスアプリも『FitXR』など次々と登場しています。 Meta Quest 3S用には、純正オプションでメッシュ型の接顔マスク「Meta Quest 3S通気性接顔部」も登場しました。通気性を良くすることでスポーツやフィットネスアプリで問題になる汗蒸れを軽減するためのものです。今回のMRマルチプレイヤーFPSの体験でも、このメッシュ型のマスクが使われていました。 ◆ファーストインプレッションは大満足 今回の体験会では、用意されたコンテンツを数分から10分程度触っただけなので、Quest 3SをQuest 3やQuest 2と厳密に比べることはできませんでした。しかし、それでも予想していた以上にQuest 3の良さを、より低価格で提供できていると個人的には感じました。 ヘッドセットを持っていない人の入門機として、もしくはMeta Quest 2のユーザーのアップグレード機として、充分にリーズナブルと言ってよさそうです。 Quest 3Sの実機を入手できしだい、より詳細なレポートをお届けしたいと思います。
Game*Spark 根岸智幸
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