起業家育成・学費実質無料で話題の「神山まるごと高専」2年目、東京の進学校を辞退し選んだ学生も。企業70社以上が支援する唯一無二の授業の内容とは 徳島県神山町
テクノロジーだけではない、人との繋がりでやりたいことが見えてきた
「中学時代は、将来なにか特にやりたいことがあったわけではありません。たまたま父親に勧められてこの学校のキャンパスツアーに参加して、進学を決意しました」と語るのは静岡県出身の伊藤楽大さん。入学後、起業家や教員とコミュニケーションを取るうちに、徐々に「やりたいこと」が見えてきたという。 「いろいろチャレンジしている大人と出会えたことで、選択肢がものすごい広がった。今はその選択肢のなかから、農業が『やりたいこと』としてクローズアップされてきました」。静岡の市街地で育った伊藤さんは、神山の自然に触れたこともひとつのきっかけになった。 同校の理事が運営する農園に足を運んだり、周辺の草刈りの手伝いなどを経て、ますます農業にはまっていった。神山町特産であるシイタケの農家をはじめ、農業を通じて地域の人と関わりを深めていくことで「自分でやりたいことができる」と自信を持ち始めている。 その一方で悩んだのは、寮生活と偉大すぎる起業家たちの存在。「寮生活は自分にはあまり合わなくて、少し悩みました。それと『自分も起業家のようにならないといけない』というプレッシャーも感じました」 ふたつの悩みに押しつぶされそうになった伊藤さんを救ってくれたのは、同校のスタッフの存在。「時間が解消してくれたものありますが、話を聞いてサポートしてくれたスタッフさんのお陰で乗り越えることができました」と振り返る伊藤さん。目下じゃがいもづくりに興味を傾けているが、将来は自然関係の会社の経営を夢のひとつとして描いている。 話を聞いた3人は、それぞれに充実した学生生活を送っていることが分かる。とはいえ遊びたい盛りの多感な世代。神山の自然に満足しているものの、カラオケやゲームセンターなど仲間と遊べる場所は少なく、都会的な刺激を直接受ける機会も少ないのも事実だろう。 さらに試験で60点以下の赤点となれば、進級は叶わない。難関を突破した力はあったとしても、今の環境に馴染めず、この先全員が苦労せず進級できるとは限らない。マイナス面や不安を上げれば切りがないが、少なくとも大半の学生が生き生きと過ごしているのは印象的だった。
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