大混戦のJ1優勝争い「こうなる」(3)柏、湘南、札幌…タイトルの行方を「左右する」残留争いチーム、事態を「複雑にする」天皇杯とACL、「憧れた」欧州リーグは
■2週間の中断期間に「カップ戦」
さらに、事態を複雑にするのが、残り2節までのスケジュールだ。 J1リーグは、代表活動と天皇杯決勝があるため、2週間の中断に入る。中断によって休養を取ることができるのは、もちろんフィジカル的な立て直しを図れるのでありがたいことではあろうが、メンタル的に追い込まれた中での中断はマネジメントが難しいという面もある。 そして、さらに複雑なことに、この間にカップ戦の日程が挟まってくるのだ。 神戸は第37節の柏戦の前に天皇杯決勝のG大阪戦と、ACLエリートの第5節、セントラルコースト・マリナーズ(オーストラリア)戦がある。そして、柏戦から最終節までの間にやはりACLEの浦項スティーラーズ(韓国)戦が挟まる。浦項戦はアウェイだが、神戸から浦項までの移動はそれほど長距離ではない。 天皇杯決勝はガチンコ勝負とならざるを得ないだろうが、ACLEの試合はターンオーバーを使うことになるだろう(神戸は現在3勝1分でグループEASTのトップに立っており、ターンオーバーを使う余裕はある)。 一方、広島の方は天皇杯がない分1試合少ないが、カヤFCイロイロ(フィリピン)とのアウェイ戦と東方(香港)とのホームゲームがある。広島は、すでにグループステージ勝ち抜けを決めているので、ターンオーバーを使うことができる。 こうしたカップ戦で疲労をためないことも大事だが、同時にゲーム感覚が開きすぎないように、適当な時間、選手をプレーさせることも大事になる。 ACLの試合で、そうしたマネジメントをうまく行うことも、両チーム監督にとっての大きな課題になるはずだ。
■本来の面白さは「Jリーグ」にアリ
浦和との試合の後、3連敗について質問されたミヒャエル・スキッベ監督は「Jリーグというのは上位と下位の力が拮抗したリーグだから」と答えていた。外国人監督からよく聞く言葉の一つである。 僕たちサッカージャーナリストは毎シーズン、開幕前に「順位予想」という難題を突きつけられる。「外したら嫌だな」と思うと同時に、「他の記者と同じではつまらないな」とも思って頭を悩ます。 しかし、スペインの記者だったら「レアル・マドリードかバルセロナ」と答えておけば、誰にも文句をつけられることはない。ドイツだったら「バイエルン・ミュンヘン」、フランスだったら「パリ・サンジェルマン」と答えておけば当たり障りないだろうし、たいてい当たる。 Jリーグは、やはり現代の世界では類を見ない拮抗したリーグなのだ。韓国のKリーグや中国の超級聯賽でも、Jリーグよりははるかに予想が簡単そうだ。 ヨーロッパの、各国に絶対王者的なメガクラブが存在するのを見慣れている日本のサッカーファンには、そういったクラブが存在しないJリーグは物足りないと感じるのかもしれない。 しかし、リーグ戦というのは、本来そういうものなのではないだろうか。 毎年、同じクラブが優勝していたのではリーグ戦の面白さはない。Jリーグの、心理戦だか消耗戦だか分からないが、追い詰められた者同士の競り合いこそ、リーグ戦本来の楽しみなのかもしれない。 遠い昔、Jリーグが発足する前の日本サッカーリーグ(JSL)の時代。優勝するのは東洋工業とか、三菱重工とか、ヤンマーディーゼルとかに決まっていた。もっと時代を下って、JSLの最後の10年ほどは日産自動車と読売サッカークラブが毎年のようにタイトルを独占していた。 そんな時代、ヨーロッパでは今のように各クラブの財政規模が大きくなかったので、勢力は均衡していた。プレミアリーグが発足する前のイングランドのフットボールリーグでも、西ドイツのブンデスリーガでも、毎年、どこが優勝するのか分からない時代が続いていた。それを見て、僕はいつも、「ああ、ヨーロッパのリーグ戦は面白そうでいいなぁ」と憧れていたものである。
後藤健生
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