遊牧民の草原は資源エネルギー基地へ変貌……代償は地下水汚染の“ガン村”
日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。同じモンゴル民族のモンゴル国は独立国家ですが、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれています。近年目覚ましい経済発展を遂げた一方で、遊牧民の生活や独自の文化、風土が失われてきました。 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録するためシャッターを切り続けています。アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。 ----------
鉱山開発が深刻な環境問題を招いている。内モンゴルでは、特に鉄、レアアース、石炭などの埋蔵量が豊富で、現在は国家の重要な資源エネルギー基地と位置づけられた。 例えば、先述のスウェーデン人探検家のヘディンが1927年に訪れたボゴト(包頭)のレアアースは、全国総生産9割以上を占めている。また、全国最大級の製鉄工場もあり、中国の経済発展を支えてきた。 しかし、その代償はあまりに大きかった。 ボゴトとはモンゴル語で「ボゴ」(鹿)がたくさんいるとことを意味し、自然が豊かな地域だった。だが、現在は地下水や大気の汚染が深刻になっている。特に汚染された地下水によって多くの村人がガンなどの難病を患い、死亡率が高くなっている“ガン村”の存在が社会問題化している。(つづく) ※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮るーアラタンホヤガ第6回」の一部を抜粋しました。 ---------- アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA) 1977年 内モンゴル生まれ 2001年 来日 2013年 日本写真芸術専門学校卒業 国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。 主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。