Google、AI検索開始 投資家は広告収入への影響懸念
米グーグルが生成AI(人工知能)を使ったネット検索サービス「AI Overviews(オーバービュー)」を始める。これまでのように検索語を単語ごとに区切って入力しなくても、質問の文章をそのまま入力すれば、要約形式で回答を得られる。 グーグルは、「これまでの試験運用で評判が良かった」と自信を示している。しかし、同社を支える年間数千億ドルに上る広告収入や、検索エンジンに依存する報道機関との関係にどのような影響を及ぼすか懸念されている。 ■ まず米国で開始、年末までに世界10億人以上に AI検索は過去1年間、「Search Generative Experience(SGE)」の名称で一部の利用者を対象に試験的に提供してきたが、近く一般公開する。まず、米国で提供し2024年末までに他の国々にも展開し、最終的に10億人以上が利用できるようになるとしている。 AI Overviewsの特徴は、テキストや画像、動画を扱える生成AI「Gemini(ジェミニ)」の技術を活用した点だ。 例えば、「寮で生活している大学生向けの7日間の食事プランを提案してください。節約と電子レンジ対応を考慮して」と入力すると、7日間の朝・昼・夕食それぞれの簡単節約・電子レンジレシピを画像とともに表示する。 グーグルの検索担当副社長のリズ・リード氏はインタビューで「この技術により、ユーザーの問題を解決することができる。ユーザーは喜んで受け入れ、すぐに使いこなすだろう」とコメントした。
■ AIと検索市場の競争激化が背景 この新しい検索機能登場の背景には、AIとネット検索市場における競争の激化があると、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は報じている。例えば米マイクロソフトは、出資する米オープンAIの技術を活用した会話形式の検索機能を「Bing(ビング)」に導入している。AI検索に特化したスタートアップ企業も登場しており、10億ドル(約1600億円)以上の評価が付けられるケースも少なくない。オープンAIもグーグル対抗の検索サービスを開発していると報じられている。 一方で、AI検索では、広告の表示スペースが減り、広告クリック数も減少する恐れがあると投資家は懸念している。グーグルは、AI検索と広告がどのように連携するかの情報をほとんど出していない。WSJは、グーグルが近くイベントを開き、広告形式に関する詳細を発表する見通しだと報じている。 読者へのリーチを検索エンジンに依存しているニュースパブリッシャーや独立系ウエブサイトの運営企業にも懸念が広がっている。これについてグーグルは、「パブリッシャーサイトへのトラフィック維持を優先する」と説明している。 ■ グーグルのAI検索、当面は「実験中」 グーグルのリード副社長によれば、AI検索はまだ初期段階であり、完璧であるとは言えないという。そのため当面はサービスに「実験中」のラベルを付ける。すべての検索にAI検索が適用されるわけではないという。例えば利用者がキーワード「ウォルマート」で検索した場合、従来の検索結果画面を出す。「ユーザーは単にウォルマートの公式サイトにアクセスしたいだけであり、AIによる説明は必要ない」(同) 加えて、AIは誤った情報を生成することもある。AIによる回答が適切ではないと判断された場合は従来通り、リンク、広告、ウェブページのスニペット(短い説明文)の組み合わせで構成される検索結果画面を出すと、グーグルは説明している。
小久保 重信