さわのはな純米酒、思い込めて完成 米沢の千葉さん、稲作から初挑戦
米沢市内で農地を引き継ぎ、今年から米作りを始めた農業千葉陽平さん(49)=同市太田町4丁目=が栽培した県産品種「さわのはな」を使い、長井市の酒造会社・長沼合名会社が、純米酒を造った。肥料や農薬を一切使わず、収穫量は少なかったものの、初挑戦としてはコメの出来栄えは上々。酒も飲みやすい仕上がりとなった。 千葉さんは松山市出身で、建設関係の仕事をしていた際に本県を訪れ、自然や農業の魅力に引かれ、米沢市に移住した。青果店での勤務を経て2014年に農業を始めた。現在はUターンや移住による新規就農者でつくる「山形ノーカーズ」の代表を務める。これまでは野菜やソバを肥料と農薬を使わずに生産してきた。 今年に入り、知人の米生産者の男性が他界。男性の家族から1ヘクタールほどの水田を引き継いでほしいと頼まれ、水稲も生産することにした。栽培品種を考えた際、頭に浮かんだのは5年ほど前に食べた「さわのはな」だった。
さわのはなは、旧農林省の東北農業試験場尾花沢試験地で誕生した県産品種。食味に優れ、いもち病や冷害に強く、かつては県の奨励品種だった。ただ、倒れやすいなどの理由で、1996年に県奨励品種から外れ、生産量は激減した。千葉さんは、食べたときのおいしさを忘れられず、栽培を決意。肥料や農薬を一切使わず、生産した。 「思ったほどの収穫量にはならなかったが、納得できるコメができた」と千葉さん。多くの人に、さわのはなの魅力を伝えたいと、長沼合名会社の協力を得て、日本酒にすることにした。440キロのコメを使い、70%まで磨き、同社の井戸水で仕込んだ。先月25日の搾り作業には千葉さんも立ち会った。「しっかり辛く、切れのある酒に仕上がった。千葉さんの思いがこもった良い酒」と杜氏(とうじ)の長沼伸行さん(48)も太鼓判を押す。 純米酒は「はつしごと」と命名。1本720ミリリットル入り2728円で、インターネットサイト「山形ちば吉」で約1500本を限定販売する。酒はあまり飲まないというが、千葉さんも「感動する味わいに仕上げてもらえた。農業を通し、地元に根付く食や酒の文化を豊かにしていきたい」と語った。