「他の百貨店と熱量が違う」と出店者 還暦迎えた秋の風物詩「北海道物産展」の高い集客力には、山形屋ならではの商品開発など秘密がいっぱい 鹿児島市
6日始まった山形屋(鹿児島市)の「北海道の物産と観光展」は、今回で“還暦”を迎えた。「北海道物産展」の愛称で親しまれ、鹿児島の秋の風物詩といえる催事に成長した。魅力的な北海道ブランドに加え、担当が道内の仕入れ先をくまなく回り、鹿児島県民の味覚に合う商品開発まで担う徹底した現場主義が、高い集客力を支えている。 【写真】長蛇の行列をつくり開店を待つ買い物客ら=6日午前9時40分、鹿児島市の山形屋
同展は1964年スタート。新型コロナウイルス禍の2020年を除き毎年開催する。初回は6日間で売上高は約200万円だった。その後は期間や会場を徐々に拡大して、ピークは18年の11億1000万円弱(会期20日間)。今年は21日間で売上高10億円を目指す。 食品統括部の山口政博部長(60)は、同展を25回担当する。「道内各地の物産協会とも連携し、お墨付きのお店を中心に足を運ぶ。そこで客の要望に加え、これまで培った経験を基に材料や味付け、価格などの交渉を重ねている」と独自の工夫を明かす。 これまで甘口しょうゆをベースにしたイクラしょうゆ漬けや数の子を多めにした数の子松前漬けなど、山形屋ならではの商品を開発。今年も初夏の北海道物産展(4月末~)を兼ねて、2、6、9月に約2週間ずつ、仕入れ担当やバイヤーら6、7人が新商品の商談や新規開拓に奔走した。 海鮮弁当を販売する北の味処多聞天(札幌市)は約30年間出店する。池田栄昇社長(74)は「他の百貨店と熱量が違う。バイヤーと一緒に市場を回るなど、二人三脚で成長している。担当の知識も豊富で納得の商品を出せている」と話す。
北海道貿易物産振興会(同市)によると、全国の百貨店で昨年度の道主催の物産展は31あり、売上高は計約83億円。うち山形屋は2位の1.67倍の9億円超だった。北海道の三橋剛副知事(59)は「北海道の魅力をよく探し出してPRしてくれている」と感心した。 山形屋は現在、私的整理の一種「事業再生ADR」を活用して経営再建に取り組む。事業再生計画では、催事などで集客力向上を図り「強みを生かした売り上げ向上に取り組む」としている。
南日本新聞 | 鹿児島