町田FW藤尾翔太が示した点取り屋の矜持。狡猾なヘッド&PK弾でパリ五輪行きへ猛アピール
U-23代表では海外組との競争も
60分には2点目をゲット。左MF平河悠がボックス内で倒されると、藤尾は迷わずにボールを掴んでペナルティスポットへ。「VARが入って、(その映像をスタジアムの)スクリーンで見た時に、たぶんPKだなと思ったので、心の準備をしました」(藤尾)。 試合前からキッカーに指名されていたが、誰よりも早くボールを拾い上げて蹴る意思を示したのは、ストライカーとしての矜持だろう。右ポストに当てながらもしっかりと決め切り、今季初のドッピエッタを達成した。 代表活動から戻ってきて無得点が続いていたが、東京V戦の2ゴールで今季の得点数を「5」に伸ばし、パリ五輪に向けてアピールになったのは間違いない。来月にはメンバー発表前最後の活動となるアメリカ遠征を控えており、U-23アジア杯で不在だった海外組も戻ってくる見込みだ。 それだけに、Jリーグで結果を残さなければ、生き残りは難しい。ライバルたちとの競争を前に、チームで結果を出せたことは自信にも繋がる。そして何より、「焦りはない」としつつも、少なからず心に余裕が生まれたことは、プレーに好循環をもたらす。 「チームの順位と、やっぱり個人の結果がすごく結びつくと思うので、今日勝てたことは嬉しい」という言葉からもポジティブな空気が漂っており、次戦以降もゴールを重ねられれば、より良い状態で代表活動に向えるはずだ。 残された期間は、あとわずか。クラブでのポジション争いに勝ち、J1初参戦ながら首位を走るチームで奮闘するストライカーは、謙虚な姿勢を保ちつつ、さらなる飛躍を目ざしてゴールを重ねていく。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)