《ブラジル》鳥山明氏の死を無駄にしないために=なぜマンガ・アニメが中南米で大人気か 桜井悌司(ラテンアメリカ協会常務理事)
実は誰もよく分かっていないマンガ・アニメの真の実力
「週刊・少年ジャンプ」連載の「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」で有名な鳥山明氏が3月1日に68歳で亡くなった。世界80カ国で愛読され、その単行本の発売は2億6千万部に達するという。世界中のマスコミはその訃報を報じ、フランス大統領、英国、韓国、中国の外務省等からも弔辞があった。 この原稿は、彼の死亡に伴って、ラテンアメリカで起こった様々な出来事を紹介し、その中から得られる日本のマンガ・アニメ等のコンテンツをより一層普及させ、活用するにはどうすればいいかを考えるものである。 日本のマンガやアニメが世界中を席巻していることは誰もが知っている。しかし、それらの情報はどちらかというと筆者を含め断片的なもの、あいまいなものがほとんどで、実際どのくらいの影響力があるのかは誰も理解していない。おそらく一部のオタクはよくわかっているかもしれないが、日本文化の研究者でも、コンテンツ産業のプロモーターにしても、海外駐在員にしても必ずしも十分な情報を持っているわけではない。今回の鳥山氏の死亡に伴う世界的な反響で、いかに鳥山氏やドラゴンボールの偉大さを理解することができたのだ。
鳥山明氏の死亡後にラテンアメリカでおこった主な出来事
ここでは、鳥山氏の死亡報道が出た直後に、ラテンアメリカでどのような反応が具体的に出てきたかを紹介しよう。 (1)アルゼンチンのブエノスアイレス市で「元気玉」追悼集会 3月11日、ブエノスアイレス市のメインストリート「7月9日通り」にある同市のシンボル的建造物のオベリスクに数千人が集まり、鳥山明氏とドラゴンボールを追悼するための「元気玉」集会が開催された。SNSの呼びかけに応じたものである。同様な集会が第2の都市ロサリオや第3の都市コルドバでも開催された。 詳細は3月13日付け「ブラジル日報」の相川知子氏による《在住者レポート「アルゼンチンは今」=天に両手上げ〝GENKI〟送る=鳥山明追悼で熱狂的元気玉集会》を参照のこと。 (2)ペルーでは、鳥山明先生追悼の「ドラゴンボール壁画」が完成! ペルーの首都リマのラ・ビクトリア地区の街角に、ドラゴンボールの生みの親である漫画家・鳥山明氏に敬意を表した「巨大な記念壁画」が出現した。全国から集まった約45人のペルーのアーティスト集団によって共同制作されたそのカラフルな壁画には「悟空」や「アラレちゃん」等70以上のキャラクターが登場し、ドラゴンボールの世界的な影響力と鳥山氏の芸術的独創性を称えていると、現地紙エル・コメルシオ紙などが報じている。あまりのスピードで壁画が完成したことには驚きを禁じ得ない。 (3)メキシコではソカロ広場で「元気玉」集会 メキシコの有力紙Excelsiorの3月9日付け記事によると、「ドラゴンボール」の作者である鳥山明氏の死去が3月7日に発表され、数世代に渡るこの漫画の世界中の何千ものファンにとって壊滅的なニュースとなったが、次の土曜日、メキシコ・シティのゾカロに多数の人々が集まり、この日本人イラストレーターに別れを告げたと報道された。鳥山明が世界の漫画界をリードしてきた人物であることは記憶に新しい。『ドラゴンボール』だけで悟空、ベジータ、悟飯、フリーザ、クリリンといった愛すべきキャラクターを生み出したと報道している。