「ウィキリークス」創設者・アサンジ被告、英国で保釈 豪州に帰国へ
内部告発サイト「ウィキリークス」創設者で、米国でスパイ防止法違反(機密暴露の共謀)などの罪に問われたジュリアン・アサンジ被告(52)が24日、英ロンドンの拘置施設から保釈された。ウィキリークスがX(ツイッター)を通じ、飛行機に乗り込む動画を公開した。米司法省が25日に米自治領サイパンの連邦地裁に提出した書面によると、アサンジ被告は検察側との司法取引に応じ、同罪で有罪を認める代わりに米国での収監を免れる見通し。 【ビジネスマンに元スパイも】世界各国の指導者たち 地裁が司法取引の内容を認めれば、26日に出廷して判決を受けた後、出身地のオーストラリアに帰国する予定になっている。ロイター通信によると、アサンジ被告は拘置施設を出て飛行機に乗り込んだ。サイパンに向かったとみられる。 アサンジ被告は2012~19年、ロンドンの在英エクアドル大使館にかくまわれていた。米当局は18年3月に起訴し、英国に引き渡しを要求。英当局は19年4月に逮捕した。しかし、アサンジ被告は、米国への移送に不服を申し立て、移送を巡る裁判手続きが長期化していた。一方、出身国のオーストラリアは、アサンジ被告の帰国を認めるように米政府に働きかけていた。 提出書面や米メディアによると、アサンジ被告は計18の罪状で起訴されていたが、国防に関する機密文書を不法に入手し、流布した1件について有罪を認めることで検察側と合意した。司法取引には、特例として裁判手続きが1日で済まされ、米国での収監も免れる条項も含まれている。アサンジ被告は18件で有罪になれば、最高で禁錮175年の刑を受ける可能性があり、従来は「米国では公正な裁判を受けられない」と主張していた。 ウィキリークスは10~11年、イラクやアフガニスタンでの戦争に関する文書約50万点や国務省の公電約25万点などを次々と公開し、世界に衝撃を与えた。イラクで米軍ヘリが民間人を誤って射殺する映像も含まれていた。16年の米大統領選では、ロシアがサイバー攻撃で民主党やヒラリー・クリントン候補の陣営から入手した電子メールの内容をウィキリークスが暴露したこともある。 「機密情報を漏らすことで米国の安全保障を損ない、情報提供者を危険にさらした」と非難する声がある一方で、「政府の不正を暴露した」との評価もある。ジャーナリストと名乗っていたことから、刑事訴追をすれば「報道の自由」を侵害する恐れも指摘されていた。【ワシントン秋山信一】