イーロン・マスクの米政権入りでXはどうなる…売却の可能性は? 論調は変化するのか?
アメリカ大統領への返り咲きが目前に迫るドナルド・トランプ氏が11月12日、就任後に「政府効率化省」を創設し、同省をイーロン・マスク氏が管轄すると発表した。マスク氏は2022年には当時のツイッター(現X)を買収するなどSNS界の寵児として知られており、同氏のアメリカ政府入りは大きな注目を浴びている。 元グラドル小出広美さんは日本最大規模の「反ワクチン団体」で活動 そのワケを本人に直撃 ■「Xの価値がいくらかでも回復していくのでは」 IT長者が政府の要職に就くことで、Xはどのように変わっていくのだろうか。マスク氏は14日、イランの国連大使と会談。各メディアの報道では長年敵国同士として知られている両国の緊張緩和に資する協議が行われたとされているが、ITジャーナリストの井上トシユキ氏はマスク氏がXについての動きをさっそく見せたと分析する。 「2022年の買収以降、マスク氏が積極的に取り締まらないこともあり、近年のXは陰謀論がはびこりがちです。当然、SNSとしての価値はダダ下がり。恐らく、マスク氏が買収した際の時価総額はないとみて良いでしょう。そんな中で、今回のような国際的な橋渡し役をマスク氏が続ければ、Xの価値がいくらかでも回復していくのではないでしょうか」 Xへの風当たりは広告主からのものも厳しい。2023年11月にはマスク氏が反ユダヤ主義的な投稿に賛同したことを受けて広告を引き揚げた企業に対して「くたばれ」と罵ったが、その直後に寄せられた、広告費の減少でXが行き詰った場合、売却に踏み切るのかとの質問への回答は避けていた。このようなこともあり、これ以降、マスク氏がXを売却するのではとの憶測が絶えないが、これについても井上氏は言及した。 「本人が国際的な橋渡し役をしていくことでXのSNSとしての格が上がり、恐らく、いざXの売却を思い立った際には今よりは高く売れるでしょう。今回の動きはそこまでの可能性を考えて、さっそく動いてきたなという印象です」
■「Xのリベラル色が消えていく可能性がある」
経営面の変化はもちろん、X上の論調に変化は出てくるのだろうか。13日には英・ガーディアン紙がXへ投稿を、有害なプラットフォームであるとして打ち切ると発表。また、15日にはスウェーデンのダーゲンス・ニュヘテル紙が、やはり、同様の理由でXへの投稿を打ち切ると発表するなど、既存メディアからのウケは悪いのが実情だ。 「マスク氏がもともとリベラル派の民主党を支持していたことが象徴的ですが、元来、X、というかツイッターの頃は陰謀論を嫌う傾向があるリベラル寄りのユーザーが多いSNSでした。マスク氏の買収後もなお、リベラル寄りのユーザーは今も元気にXで情報を発信していますが、リベラル勢力を倒したトランプ氏が構築する政府にマスク氏が入っていく以上、それこそ、陰謀論好きの反リベラルな人たちが以前にも増して活性化するのは明らかです。ゆえに、Xのリベラル色が消えていく可能性があると言えるでしょう」(井上氏) ただ、マスク氏が政府入りする以上、陰謀論をはじめとするいい加減な主張や差別心丸出しの投稿を野放しにしたままでは、今度はアメリカ政府の沽券にもかかわってくるのではないだろうか。それでも、井上氏は今後もそれほど厳しい取り締まりは行われないのではないかとみる。 「マスク氏はもちろん、トランプ氏も『言論の自由』を重要視する人物です。陰謀論も存在自体は言論の自由の一部ですから、積極的な規制は行わないのではないでしょうか。Xが政府に近い存在となったとしても、それが信じられないようなトンデモ話が花咲くSNSになる可能性は決して低くないでしょう」 そうなると、Xはいよいよ陰謀論まみれのSNSになっていくということなのだろうか。 「将来的には、Xはそれこそ、『政府の要人はみんな宇宙人だ!』といった話が平然と大量にリポストされてしまう状況になってしまうかもしれません。今後はネットユーザーがXも含め、さまざまなカラーのプラットフォームを自身の志向に合わせて住み分けていくことになるのではないでしょうか」 住み分けは何ら問題ないが、Xが原因でアメリカ政府が狂ってしまわないことを願うばかりである。 ◇ ◇ ◇ トランプ氏の返り咲きで混迷が深まる人類社会。関連記事【もっと読む】イーロン・マスクとドナルド・トランプ…規格外の大富豪が世界をカオスに陥れる…では、予想される混迷に言及している。