ミニスカートに網タイツで…時代考証ガン無視の「お色気シーン」が昭和のテレビで流れた「背景」
「健康的」な番組だったはずなのに
わざわざ「健康的な」と加えたのは、『変身忍者 嵐』でヒロインのポジションにあった伊賀出身のカスミと、『怪傑ライオン丸』でそのポジションにあった主人公と同門の女忍者の沙織がどちらもまだ十代で、ミニスカート風衣装から健康的な太ももを披露していたからだ。 カスミを演じた林寛子は数年後には『素敵なラブリーボーイ』というヒット曲を出し、そのまた数年後にはテレビドラマ『がんばれ! レッドビッキーズ』『それゆけ! レッドビッキーズ』で主演を務めたことで、歌手と女優の二刀流アイドルとして活躍する。 だが『変身忍者 嵐』の撮影開始時にはまだ12歳の少女であり、作中では、忍術は申し訳程度だが、医学を本格的に学んだため傷の手当は得意という役柄だった。 一方、九条亜希子演じる沙織は小太刀と投げ縄を武器とする本格的な戦闘要員で、設定では16歳となっていた。監督の安藤達巳は健康的な方向性で演出をしており、実際撮影現場はアクションが多く、演者もかなりの苦労があったという。 ところが、プロデューサーのうしおそうじは最初から「パンチラで大人受けを狙った」として、レギュラー陣の中で沙織のコスチュームが最初に決まったと語っている。監督や演者が意図しない部分で視聴者の歓心を買う作為が働いていたというのも、昭和らしいエピソードと言えるだろう。 ーーーー 後編〈由美かおるの「レオタード」はどう考えてもあり得ない…「昭和の時代劇」に無理やり盛り込まれた「肉体美」のナゾ〉では、「時代劇お色気」の代名詞でもある由美かおるほか、21世紀に至るまでのテレビの変遷について、引き続き論じる。
島崎 晋(歴史作家)