「植田ショック」の荒れ相場で見逃してはいけない"勝ち筋"
国会での植田和男・日銀総裁の発言によって、為替相場が大きく円高に振れた。これを受けて、日本株市場も変調を来している(写真:ブルームバーグ)
「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」という日本銀行の植田和男総裁による国会での発言が衝撃を与えたらしい。「いよいよマイナス金利解除か。それも年末だ!」と読み取って、慌てて円を買い、円債や日本株を売るという反応が起こったのが、先週12月8日にかけての金融市場であった。 当方、英語に堪能なわけではなく、余計な言いがかりかもしれないが、この「challenging」なる言葉、「挑戦的な」という前向きなニュアンスとともに、「困難だが、やりがいのある」といった意味合いも強いと聞く。だから、この「チャレンジングになる」という発言を「マイナス金利解除の決断(12月18~19日に年内最後の決定会合が開かれる)」と読み取るのはかなり短絡的で、前のめりすぎるだろう。 むしろ「欧米の中央銀行が利下げ方向に舵を切りつつある中、遅れて利上げするのはまずい」「景気や物価状況は必ずしも政策転換を支援する方向だけで動いていない」「ましてや、風雲急を告げる政治が金融緩和の終結を許さないだろう」など、それこそ困難な、取り巻く状況について、それに向かい合う自らの姿を象徴的に語ったにすぎないように思われる。 「年末」といえば、植田総裁が9月に読売新聞のインタビューを受けて、「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と語っていたことが連想的に思い起こされたのだろう。これも「情報やデータがそろう可能性」について語っているのだから、12月会合で決めるとまでは踏み込んでいなかった。 12月13日には11月調査の日銀短観が発表されるから、もしかするとこれが政策決定に示唆を与えるかもしれない(植田総裁はそう思っているかもしれない)ので、チェックは必要だろう。だが、あまりに性急に前のめりすぎる市場からは、一歩身を引いて眺めていたほうがいいだろう。
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岩本 秀雄