また日歯連 「1億円事件」との関連は 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連)による政治家への不明朗な資金の流れがあったとして、東京地検特捜部は10月20日、日歯連の前会長、前副理事長で会計責任者、元会長の3人を政治資金規正法違反(虚偽記入および量的制限違反)罪で起訴しました。日歯連は2004年にも旧橋本派(現在の額賀派)への1億円献金隠し事件で摘発されています。 【図】<政党交付金>各党の交付額は?その使い道は? そこで、10年前の事件を振り返りながら今回の事件と捜査はどうつながっていくのか? について考えていきます。
今回の「迂回寄付事件」の構図
これまでの報道によると事件は大きく2つあります。1つは2010年、日歯連は民主党の西村正美参議院議員の後援会(政治団体)に政治団体間において1年でできる上限の5000万円を寄付しながら、民主党参議院比例区第80総支部 (総支部長は西村氏)にも同額を寄付し、計1億円が西村氏に渡りました。特捜部はこれを「迂回献金」とみなし、日歯連から支部へ、支部から西村氏へのカネの流れを示す政治資金収支報告書に虚偽の記入をしたと踏んでいます。 もう1つは13年、日歯連が西村氏の後援会に寄付した5000万円が、そのままトンネルをくぐり抜けるように自民党の石井みどり参議院議員の後援会へ渡り、なおかつ日歯連は石井後援会に別途4500万円を直接寄付しました。このトンネルの出入り口が虚偽記載で、計金額9500万円が量的制限違反というのが特捜部の見立てです。 西村氏、石井氏は政党こそ異なるものの、同じ歯科医師の出身で日歯連の組織内候補者です。どちらも全国を選挙区とする参議院比例区選出。比例区議席は各党が獲得した得票に応じて分配され個人票の多い順から当選していきます。したがって各候補者はいかに個人名を書いてもらうかに明け暮れ、知名度アップのため全国を駆け回りカネがいくらあっても足りないような案配です。
2004年には「1億円献金隠し事件」
先述の通り日歯連といえば04年に発覚した政治家への1億円献金隠しが思い起こされます。徹底的に批判されたにもかかわらず、またしてもの不祥事に「またか」という声も上がっています。 2001年7月、その年の自民党総裁選で小泉純一郎氏にまさかの敗北を喫しながらも隠然たる力を保有していた橋本派の橋本龍太郎元首相、野中広務元自民党幹事長および参議院のドンと呼ばれていた青木幹雄同党参議員幹事長の3人が、日歯連の幹部(後に有罪確定)から都内の料亭で1億円の小切手を受け取りました。政治献金です。この扱いについて02年の派閥幹部会(村岡兼造橋本派会長代理、野中、青木各氏ら出席)で収支報告書に記載しないと決めました。 事件が発覚した04年、東京地検特捜部は政治資金規正法違反容疑で捜査に着手し、一時は大物逮捕もあるかと政界は騒然となりました。しかし橋本、青木両氏の「知らない」という反論を崩せずに嫌疑不十分で不起訴。野中氏も「関与はあったものの積極的ではない」と「目こぼし」に当たる起訴猶予としました(後に不起訴)。