令和6年能登半島地震で注目される「BCP」の存在
BCP作成は値上げ交渉にも影響してくる
飯田)台湾も地震が多い国なので、TSMCもそういうところを重く見るのでしょうか? 馬渕)大企業側も自分たちの取引先がリスク管理できているかどうかを見ています。また、BCP作成は値上げ交渉にも影響してくる可能性があり、「自分たちはここまでリスクを考えているのだから取引してください」という付加価値のつけ方もある。さらにはしっかりと物が守れるので、値上げ交渉にもつながります。そのように災害プラスBCPを使っていくといいのではないでしょうか。 飯田)災害もそうですが、人がいなければ事業は継続できません。 馬渕)そうなのですよ。いかに守るのか、平常時に考えておくことが大事だと思います。
災害の多い日本にはBCPの意識付けが重要 ~地方自治体や地銀のサポートを受けて作成できる簡易版BCPも
飯田)「こういう話は大企業向けで、うちのような中小はできない」という方もいるかも知れませんが、補助金などは出るのですか? 馬渕)補助金が出ることもありますし、簡易版BCPもあるので、A4用紙4枚程度の書類を地方自治体や地銀のサポートを受けて作成できます。これから金利が高まっていくなか、企業経営者の方々がお金を借りるコストも高まりますが、これを受けると補助金やものづくり補助金が出たり、低い金利でお金を借りられるなど、BCPには制度としてのメリットが整えられています。 飯田)そうなのですね。 馬渕)さらに認定証が発行されるので、ホームページに掲載し、「自分たちはリスクをしっかり認識できている会社です」と発表する企業も多いです。
働く側も自分ごととしてリスクの認識を高めて物事を考えることができ、組織がいい方向に向かっていく
馬渕)中小企業庁がBCPを作成した企業にアンケートを行っており、そのなかの約6割の企業が「従業員のリスク認識が変わった」と答えています。経営者側は常にリスクを考えていますが、現場で働く側も自分ごととしてリスクの認識を高めて物事を考えることができ、組織がいい方向に向かっていくことになります。 飯田)なるほど。 馬渕)制度自体には、もちろん補助金という恩恵もありますが、組織をよりよく変えていくプラスの効果がある。さらに「自分たちは信頼できる企業である」と対外アピールにも使えて、副次的な効果も期待できます。パフォーマンスとしてつくるのではなく、この辺りまでイメージして設計することを私自身、いろいろなところでお勧めしています。 飯田)トップダウンというよりも、現場から「どういうリスクがあるのか」と洗い出していく方がいいのですか? 馬渕)号令はトップがかけますが、つくるのは現場です。そうすると現場の意識が変わり、かつ自分たちで「事業のやり方やマニュアルを変えよう」という声が出てくるらしいのです。自発的な組織に育つので、現場で物事を考えられるようになる。こういう使い方がBCPの制度にはあると思います。