借主と「契約更新料」で揉めないために…アパートオーナーがとるべき対策【弁護士が解説】
更新時のトラブルを未然に防ぐには?
1.賃貸借契約書に一義的かつ具体的に更新料に関する規定を記載する まず、トラブルを未然に防ぐためには、上記の判決も述べているように、賃貸借契約書において、一義的かつ具体的に更新料についての規定を設けることが重要です。具体的には、 (1)いつ更新料が発生するのか (2)更新料がいくらであるのか (3)更新料をいつまでに支払う必要があるのか という点について、賃貸借契約書に規定することが重要です。そのうえで、重要事項説明書にも記載し、事前に説明を行うようにしましょう。 2.更新の類型ごとに、更新料が発生するかどうかを明確に規定する 更新には、(1)合意更新、(2)自動更新、(3)法定更新の3つの類型があります。 (1)合意更新は、期間満了毎に、当事者間の合意によって賃貸借契約を更新するものをいいます。 (2)自動更新は、期間満了の際、反対の意思表示がなければ自動的に賃貸借契約が更新される内容で合意するものをいいます。 多くの賃貸借契約は、(1)合意更新または(2)自動更新のいずれかの規定が設けられていると思いますが、これらの場合において、更新料が発生するということを明確に規定するようにしましょう。 また、(3)法定更新の場合についても、更新料が発生するかどうかを明確にすることが望ましいです。 たとえば、合意更新に関する規定が設けられていた場合に、期限までに合意がまとまらなかったときには、借地借家法第26条第1項の規定に基づき「法定更新」の効果が生じます。このときに、更新料が発生するのかどうかがトラブルになりやすいですので、法定更新の場合でも更新料が発生することを明確に規定するようにしましょう。 条文例は次のとおりです。 本契約が借地借家法第26条第1項の規定に基づき法定更新された場合であっても、賃借人は、賃貸人に対し、法定更新された日から1月以内に、更新料として、新賃料の〇ヵ月分に相当する金員を支払うものとする。 3.賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額にならないよう設定する 上記の判決も述べているように、「更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情」があった場合には、更新料に関する規定が無効であると評価されるおそれがあります。 一義的にどのような場合が高額であるのかを具体的に示すことはできませんが、この判例においては、(1)更新料が賃料の2ヵ月分であること、(2)賃貸借期間が1年であることという事案において、特段の事情は認められないと評価されていることは参考になるところです。 4.更新料の支払がない場合には、賃貸借契約の解除も視野にいれる 更新料の支払義務があることを賃貸借契約において明確に規定していたにもかかわらず、賃借人が更新料の支払を行わない場合には、賃借人による債務不履行を理由として、賃貸借契約を解除することも考えられるところです。 ただし、賃貸借契約の解除が認められるためには、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊していると評価されることが必要であるところ、東京地判平成27年11月19日では、2回分の更新料の不履行だけでは解除を認めませんでした。 そのため、更新料の不払いを理由に賃貸借契約の解除を検討する場合には、更新料の支払以外にも、賃借人に約定違反がないかなどを検証したうえで、解除をするかどうか判断するとよいでしょう。
まとめ
以上のとおり、更新料についてのトラブルを回避するためには、 (1)賃貸借契約書において、一義的かつ具体的に更新料についての規定を設けること (2)賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額にならないように更新料を設定すること が重要です。 このような観点から、自己物件について、更新料が無効と評価されるリスクがないかどうかを検討し、必要に応じて賃貸借契約書や重要事項説明書の記載の修正、更新料の金額の見直しなどを行うとよいでしょう。 清水 将博 MSみなと総合法律事務所 代表弁護士
清水 将博