『アンメット』は生きる今日を肯定する 杉咲花、若葉竜也、井浦新らがつないだバトン
地上波ドラマの新しいページを開いた『アンメット』
「満たされない」を意味する『アンメット』。悲しみを心の奥に抱えた三瓶にミヤビが伝えた「こうすると影が消えます」の意味は、光をさえぎるものにも光を当てることで、周囲のすべてを照らすことだった。「自分の中に光があったら暗闇も明るく見えるんじゃないか」とミヤビは言う。ある意味で人生は失うプロセスであり、生きることは欠落と向き合うことである。けれども自らが光源になることができれば、それさえ希望に変わる。そこには大げさではない肯定の響きがあり、大好きな焼肉丼を頬ぼるミヤビは今を生きる喜びを全身で表現していた。 メイン演出のYuki Saito氏が自身のX(旧Twitter)で語ったように、ミヤビの内面世界と外界を行き来する手術シーンを「最終回のような熱量」で撮りきった第5話を観たとき、正直言って、この先の後半戦をどう展開していくのだろうと心配になった。しかし、そこからがすごかった。週替わりで岡山天音と生田絵梨花が、井浦新が、千葉雄大が、ゲスト参加した名バイプレイヤーが、そして若葉竜也と杉咲花が、各自の持てる力を発揮した渾身の演技で物語のバトンをつないだ。 画面を隔てていることを忘れてしまうくらい自然な、それでいて心のひだにじかに触れるようなリアルな感覚は作品への愛がもたらしたものだろう。今作はカンテレが追求する作品主義の最良の成果である。プロデューサーの采配のもと、局内の風通しが良いことは創造的な座組に寄与しているはずだ。杉咲は主演として重圧があった中で、若葉をはじめチーム一丸となって最終話まで駆け抜けた。『アンメット』は地上波ドラマの新しいページを開いた。
石河コウヘイ