大物俳優たちの独立事情 独禁法で「干される」習わし改善、お金ではなく自由を求め 大海原に漕ぎ出した挑戦者たち
【元文春エース記者 竜太郎が見た!】 俳優の西島秀俊が5月末をもって所属事務所をやめ、フリーランスとなることが話題になったが、最近、人気俳優の退所・独立が相次いでいる。今年に入り佐々木蔵之介や佐藤隆太、黒木華、多部未華子、田中哲司、長塚圭史、吉岡里帆、臼田あさ美、酒井若菜が退所。さらに近々大物俳優が独立するという噂もあり、旧ジャニーズも含めると、この動きは芸能界の大きな流れとなっている。 【写真】所属事務所を退社して独立することを発表した黒木華 「いずれの俳優の事務所も、芸能界で長年の経験がありマネジメントに定評があります。2022年に堺雅人が大手の田辺エージェンシーから独立したのは衝撃でした。芸能界は『独立すると干される』のが通説で、表舞台から消えてしまうこともあるからです。しかし今は独占禁止法の影響があり、そうした習わしは改善されつつあります」(民放ドラマ関係者) 俳優は基本的に個人事業者なのだが、芸能界では事務所〝就職〟システムが根づいていた。所属するといろんな意味で守られるが、一方で意向に従わなければ関係が悪くなる可能性もある。ともすると、自分を売ってくれる事務所の言いなりになることが多い。 「事務所と俳優の取り分比率が3:7はいいほうで、5:5も多いし、7:3というのもある。よくあるのがもともとのギャラを知らせないパターンで、口約束というのも多い。しかし業界が正常化し、全体的にギャラが減っている今は、『マネジメントだけでは食っていけない』と廃業する事務所が増えている」(芸能関係者) すでに有名になり成功している俳優にとっては、独立はお金だけの問題ではない。自分の表現をしたいという自由を求めての行動が多いのだ。冒頭の西島秀俊はアメリカの大手エージェント「CAA」と契約し、海外での活動も視野に入れているという。 「Netflixでヒットしたドラマ『イカゲーム』で主役を演じた韓国人俳優イ・ジョンジュエは『スター・ウォーズ』シリーズの最新作『アコライト』でジェダイ・マスター役に選ばれました。監督がひとめぼれしての抜擢(ばってき)ですが、ジョンジュエはハリウッドで基準となる英語のネーティブ発音はできない。普通外国人はオーディションを受けても、そこではじかれるのですが、異例中の異例。しかし裏を返せば日本人俳優にだってチャンスはあるということになります」(在米映画関係者) 20年前からハリウッドに進出していた真田広之は時代劇ドラマ「SHOGUN将軍」がメガヒットし、いまや世界的スターとして認められている。大海原に漕ぎ出した挑戦者から〝俳優界の大谷翔平〟が出てくることを大いに期待したい。
■中村竜太郎(なかむら・りゅうたろう) ジャーナリスト。1964年1月19日生まれ。大学卒業後、会社員を経て、95年から文藝春秋「週刊文春」編集部で勤務。NHKプロデューサーの巨額横領事件やASKAの薬物疑惑など数多くのスクープを飛ばし、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の大賞受賞は3回と歴代最多。2014年末に独立。16年に著書「スクープ! 週刊文春エース記者の取材メモ」(文藝春秋)を出版。現在、「news イット!」(フジテレビ系)の金曜コメンテーターとして出演中。