『素晴らしき哉、先生!』りおと恩師の“絆”に涙 生田絵梨花が体現するリアルな教師像
『海のはじまり』(フジテレビ系)、『あの子の子ども』(カンテレ・フジテレビ系)、そして『素晴らしき哉、先生!』(ABCテレビ・テレビ朝日系/以下『すばかな先生』)。今期は、“予期せぬ妊娠”について描いているドラマが多い。 【写真】ほぼすっぴんのようなビジュアルでりお役を演じた生田絵梨花 『すばかな先生』のりお(生田絵梨花)に関しては、すでに社会人として働いているため、ほかの2作とは異なるものの、妊娠発覚が聖也(小関裕太)と正式に別れた直後(しかも浮気されていた)というのが、なんとも過酷すぎる。 そして、聖也は「それって、間違いなく俺の子……なんだよね?」と言ってくるような人間だし、「迷惑かけないようにするから」とりおが部屋を飛び出しても、追いかけてこなかった。2人で育てていくという選択肢は、りおのなかにはないだろう。 りおの実家には、子育てのサポートをしてくれそうな両親もいるが、シングルで子どもを産むとなると、“普通”ではない道を歩むことになる。生徒たちに尊敬される人間であるためには、レールから外れるべきではない……と思ったりおは、中絶を決意する。「教師って、そういう生き物なんだよ」と自分に言い聞かせながら。 第6話は、生田絵梨花の“いっぱいいっぱいになっている”演技が光っていた。妊娠のことでも悩み、生徒が銀座のクラブで働いているという情報を聞いてしまったことでも悩み、教師にとって地獄の夏休みがやってくることでも悩み……。ほぼすっぴんのようなビジュアルに、くまがたっぷり。 第1話で、聖也と楽しそうにお家デートをしていたときの輝きは、もう存在しない。まさに、体当たりでりおという役柄に向き合っているのが伝わってくる。教師をしている友人も、「めっちゃリアル……!」と生田の演技を絶賛していた。
温かさに触れられた回でもあった『素晴らしき哉、先生!』第6話
第6話は、かなりしんどい部分はあったが、そのぶん温かさに触れられた回でもあった。ゲスト出演の金田明夫が演じたのは、りおが「人生でいちばん尊敬する人」と話す恩師の大森。「教師は、尊敬される人でないと」と追い詰められているりおに、大森は「いいんだぞ、完璧じゃなくて。失敗したっていいんだよ。ダメダメでいいんだ。一生懸命やっていれば。生徒のこと、ちゃんと思ってさえいれば。間違いがあってもいい。教師だって、人間なんだよ」と声をかけた。 りおが、どうしてこんなにも教師の仕事を頑張れるのか? その答えが、大森の姿に詰まっているような気がした。りおはきっと、大森の存在に救われたことがたくさんあったのだろう。人間として心から尊敬しており、「自分も先生のような先生になりたい」と、教師を目指すようになった。ちゃんと指針があるからこそ、めげそうになっても踏ん張り続けられるのかもしれない。 学校に通っている間、毎日のように生徒は教師に会う。しかし、卒業してしまうと、その関係性がプツンと途絶えてしまうことが多い。教師側から「会おうよ」と連絡するのはなかなか難しいため、「あいつ、どうしてるかなぁ」なんて思っても、“待ち”の姿勢をキープするしかないのだ。 「いつでも来なさい。教師にとっていちばんの喜びは、卒業生が訪ねてくることなんだから」 大森の言葉を聞き、お世話になった先生たちの顔を思い出して、涙がこぼれた。卒業してから母校に帰ったとき、ちょっぴり怖かった先生も、何かと口うるさくて苦手だった先生も、在校中には見たことがなかったような柔らかい笑顔で迎えてくれて。「あの頃は言えなかったけどさぁ」なんて話をしてくれるものだから、「先生も人間なんだな」と思ったり。 『すばかな先生』を観ていると、先生たちに会いたくなる。もっと、話をすればよかったなぁという後悔が湧いてくる。もしも、いま学生の人がいたら、先生たちとたくさん話をしてほしい。“聖職”と呼ばれることもある教師は、住む世界が違う人で、自分たちの気持ちを分かってくれるはずがない……と思ってしまうかもしれないけれど、大丈夫。“先生だって、人間だから”。
菜本かな