別府ひき逃げ、容疑者逮捕への協力で「800万円」報奨金はどういう収入になる?
警察庁から重要指名手配されている「八田與一容疑者」の目撃情報が、SNS上で話題となっている。八田容疑者は、2022年6月29日、大分県別府市で大学生2人を車ではねて死傷させ、未だ逃走中だ。 目撃情報とは、SNSに投稿された防犯カメラの映像。名古屋で空き巣に入ったとされる男が八田容疑者に似ているとのことで、SNSで拡散されているのだ。 八田容疑者にかけられた金額は、捜査特別報奨金 300万円と、遺族による私的懸賞金 500万円の合計額800万円。SNSでは、報奨金目当てからか「八田容疑者を捕まえたい」との投稿も見受けられる。 では、このような報奨金を獲得した場合、どのような所得区分になるのだろうか。篠 昌義税理士に聞いた。 ● 報奨金は「一時所得」となる ーー捜査特別報奨金や懸賞金を受け取った場合、どのような所得に分類されるのでしょうか? 「捜査特別報奨金は、競馬などの払戻金と同様に『一時所得』に分類されます。 一時所得は、1月1日から12月31日の1年間で合計50万円を超えると、超えた金額の1/2に対して課税されることになり、確定申告が必要です。 ただし、捜査協力する際に直接要した交通費などがある場合は、収入を得るために支出した経費として扱えるため、一時所得の計算上差し引くことができます。 たとえば、捜査特別報奨金は100万円で、捜査に要した旅費交通費が60万円の場合には、一時所得は40万円(100万円ー60万円)となります。」 ● 報奨金800万円を受け取ると税金の負担は約100万円 ーー仮に、会社員が800万円の報奨金を受け取った場合、税金はどのくらいになるのでしょうか。 「以下の条件で、800万円の報奨金がある場合の税額を計算してみましょう。 【前提条件】 ・給与収入450万円、独身の会社員。特別な控除や経費などはないものとして計算 <給与450万円+捜査特別報奨金800万円の収入があった場合> ・給与所得…給与収入450万円ー給与所得控除134万円=316万円 ・一時所得…捜査特別報奨金800万円ー特別控除額50万円=750万円 課税所得…給与所得316万円+(一時所得750万円÷2)ー基礎控除48万円=643万円 ・所得税…課税所得643万円✕20%ー427,500円=858,500円 ・住民税…課税所得643万円✕10%=643,000円 税額合計…858,500円+643,000円=1,501,500円 一方で、収入が給与450万円のみの際の税額の合計は約44万円です。そのため、もし捜査特別報奨金800万円を受け取ると、100万円ほど税金がかかることになります。また、確定申告の手続きも必要です」 ※住民税は厳密には、均等割があることや、自治体によって税率が異なるケースがありますが、簡便的に10%としています ● 所得が48万円を超えると扶養から外れる ーーもし、配偶者や親の扶養となっている人が報奨金を受け取った際はどうなるのでしょうか。 「配偶者や親の扶養に入るには、合計所得が48万円を超えないという条件があります。 この合計所得の計算は、アルバイトの給料などの給与所得だけではなく、捜査特別報奨金のような一時所得も合わせた合計所得で計算する必要があります。 たとえば、夫の扶養に入っている専業主婦のAさんが、報奨金800万円を受け取った場合、合計所得は(800万円-50万円)÷2=375万円となります。 この場合、合計所得が48万円を超えるためAさんはご主人の扶養から外れ、ご自身で確定申告が必要になります。」 ● ささいな情報でも、心当たりがあれば通報を 大分県警察本部では、引き続き情報提供を呼びかけている。 心当たりがある方は、別府警察署(代表電話:0977-21-2131)または「匿名通報窓口(ひき逃げ事件情報提供窓口):https://ttzk.graffer.jp/pref-oita/smart-apply/surveys-alias/hikinige」に情報を寄せてほしい。 【取材協力税理士】 篠 昌義(しの まさよし)公認会計士・税理士 有限責任監査法人トーマツで監査、税理士法人で実務を担当した後、シェアリングテクノロジー株式会社のCFO、代表取締役を歴任。現在は、税理士事務所所長、専門家の相談室を運営するマーケットハック株式会社の代表取締役。 事務所名: 篠昌義税理士事務所 事務所URL:https://www.sodanshitsu.co.jp/
弁護士ドットコムニュース編集部