専門家の教授が断言「SNSで流布されている"結婚式のご祝儀に新1万円の渋沢栄一はNG"は全くのデタラメである」
■眉唾ものの情報には、単語や表現を変えて3回は検索をかける 「ご祝儀に新1万円札の渋沢栄一を封入するのはNG」 最近、このような言説がSNSで話題になりました。発端は7月7日放送のインターネット番組『ABEMA的ニュースショー』で、生前の渋沢栄一が多くの「妾」を持っていたという逸話から、不貞を連想させるとしてご祝儀には不適当と言われているようです。 ですが、ご祝儀にNGというのはまったくのデタラメです。昨今ではSNSの発達によってデマが拡散し、あたかも信憑性がある情報のように流布されてしまうケースが増えました。 こうした現象はウエディング業界も例外ではありません。眉唾ものの情報に遭遇した際は、単語や表現を変えながらインターネット上で3回は検索をかけましょう。 とはいえ、ここ20~30年間で、時代の価値観の変化とともに、ウエディングの様相が大きく変化しているのも事実です。これまで30年以上業界に従事してきた知見から、その内情を解説しましょう。 まず全体的な背景として、媒酌人(仲人)が激減した影響は大きいです。かつて結婚式のホストは媒酌人が務め、招待状は両家の両親名で出すのが一般的でした。しかし、1990年頃からゲストハウスウエディングや立食形式など、従来のスタイルに縛られない挙式を行うカップルが増加しました。 価値観の多様化とともに、新郎新婦が挙式をセルフプロデュースする傾向が強まり、それに伴い媒酌人を立てる固定観念も薄れていったのです。つまり、これまで第三者がホストを務めていたことで厳格なマナーを求められるという側面がありましたが、いまは新郎新婦側もマナーをわかっていないケースが多く、しきたりを細かく意識する必要性が薄れています。
■コロナ禍の反動で費用が1000万円を超える盛大な挙式も 一方で、伝統的な和装で結婚式に参加する場合は、着こなしに注文をつける「着物警察」が昔と変わらず多く潜んでいることに注意が必要です。よほど着付けに自信がない限り、和装での参加は避けたほうがよいでしょう。 同性婚や国際結婚が浸透したことで、従来の枠組みでは定義できないカップルが増えました。ウエディング業界でも、カップルがLGBTQの場合「花嫁さま」とお呼びしていいのか、イスラム圏の参列者がいたら豚肉を提供していいのかなど、個別の対応が求められるケースが目立ちます。性的指向や人種、宗教といったセンシティブな領域だからこそ、参列者として絶対に避けたいのは晴れ舞台に水を差すこと。ゲストといえど、事前に結婚当事者や招待者の性質を把握して、タブーがないか確認しておきましょう。 ここ数年で挙式にかける金額は二極化しており、不景気から倹約する現実的なカップルが散見されつつも、コロナ禍の反動で費用が1000万円を超える盛大な式を挙行するケースが目立ちます。 そこでオススメなのが、ゲストが式場や挙式の規模などを事前にリサーチすることです。特に、挙式で出てくるコース料理のお値段。この総額と同等の額が、ご祝儀の目安とも言われているので、なにも知らずに3万円を入れて少ないと思われないようにしましょう。 一方で、いくら豪華絢爛といえども、3万円さえ払いたくない結婚式にお呼ばれする機会もあるはずです。「招待状」のテーマで、結婚式の辞退方法を解説しましたが、それは今後も関係を続けたい人に限った話です。結婚式の参加辞退をきっかけに疎遠になってもいいと思う人に対しては、仕事の出張や子供の面倒で家庭から出れないなど、言い返せないような理由づけをしましょう。辞退後に特にフォローをしなければ、「本当は来たくなかったのかな」と相手に察してもらえ、自然と疎遠になれるはず。結婚式は無理をしてでも参加しなくてよいのです。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年10月4日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 安東 徳子(あんどう・のりこ) ウエディング研究家、戸板女子短期大学服飾芸術科教授 一般社団法人日本ホスピタリエ協会代表理事、株式会社エスプレシーボ・コム代表取締役、NPO法人TOKYOウエディングフォーラム理事、日本社会学会正会員。著書に『誰も書かなかった ハネムーンでしかできない10のこと』(コスモトゥーワン)、監修に『世界・ブライダルの基本』(日本ホテル教育センター)など。 ----------
ウエディング研究家、戸板女子短期大学服飾芸術科教授 安東 徳子 構成=佐藤隼秀