家庭裁判所も注目する信金の「後見支援預金」とはどんなものか?
静岡県沼津市に本店がある沼津信用金庫(紅野正裕理事長)が7月から「後見支援預金」の取り扱いを始める。静岡県信用金庫協会によると、沼津信金にとどまらず静岡県内の12の信用金庫で順次、取り扱いを開始していく予定で、その取り組みには家庭裁判所も注目をしているという。信金と家裁、あまり聞かない組み合わせだが、後見支援預金とは何か? 家裁はなぜ静岡の信金に注目しているのだろうか?
認知症などで判断能力が十分でない人に代わり、家庭裁判所が選任した親族や弁護士等がその人の財産を管理する成年後見制度。民法改正により平成12年(2000年)4月からスタートした制度だが、後見人による財産の使い込み、横領が相次ぎ社会問題化している。 制度開始当初は、後見人に親族を選任するケースが多く、後見人に選任された親族が身内ゆえの気安さから管理すべき財産に手をつけて使い込むケースが多くあった。このため家裁では、弁護士や司法書士など専門職と言われる人たちを後見人に選任することが多くなり、それに伴って専門職後見人の数も増加していったわけだが、今度は専門職後見人による、より悪質な横領事件が発生する事態となっている。 平成27年(2015年)には、成年後見人として管理していた認知症の女性の口座から4200万円を着服したとして、元弁護士の男が警視庁に逮捕された。この元弁護士は、女性3人の口座から計1億1200万円もの額を着服していたことが明らかとなり、東京地裁は昨秋、懲役6年の実刑判決を言い渡している。 こうした後見人の不正行為を防ぐため、平成24年(2012)からは後見制度支援信託という新たな制度がつくられている。同制度は、管理する財産を信託銀行に信託し、その払い戻しや解約に家庭裁判所の指示書を必要とすることで後見人の不正を未然に防ごうというものだ。 ただし、信託する額が1000万円以上との条件がついていたり、親族後見人が手続きすることができず別に専門職後見人の選任を必要としたりするなど簡易に利用することができないほか、そもそも地方に信託銀行が少ないという事情もあり、実効性があがっているとは必ずしも言えない。静岡県の場合、信託銀行2行の店舗等が、静岡市と浜松市、沼津市の5カ所にあるのみで利用するのが難しい状況がある。