今年も暑くなりそう… アメリカでは、熱中症患者を氷の入ったボディバッグに入れて冷やしている(海外)
アメリカ各地で使われている、氷いっぱいのボディバッグ
数年前、シェン氏は熱中症の87歳の患者を診ていた。当時、シェン氏の同僚だったグラント・リップマン(Grant Lipman)氏は、野外医療に精通していた。リップマン氏はその患者を氷を詰めたボディバッグに入れるよう提案した。 「即興的な解決策の一種でしたが、よく知られた手法に基づいたものでした」とシェン氏は当時を振り返った。 シェン氏とリップマン氏、そして2人の同僚たちは、このやり方について2020年の事例報告に書いた。その1年後、ワシントン大学の医師たちが猛暑の中でこの方法を使った。 同じ年、カンザス大学の医学部の医師たちが救急隊員向けに、消火栓の水を使って冷却バッグを作る方法を教え始めた。論文では、アイスバス治療を受けた5人の患者をプロファイリングしていて、ある症例では、8分で患者の体温を下げることができたという。 ここ数年で、アリゾナ州やカリフォルニア州、テキサス州の救急隊員や医師たちも、暑さによる重症患者の治療にボディバッグを使ったクーリングバスを使用している。
患者の様子はしっかり観察
以前は、体温を急激に下げると脳卒中といった他の合併症を引き起こすのではないかと危惧する医療関係者もいた。だからこそ、治療中は患者を注意深く観察する必要がある。 この治療法は、患者をボディバッグに入れて、脇の下までドロッとした氷水のスラリーに浸すというものだ。専門家が患者の血圧や心拍数、呼吸、意識といったバイタルサインと体温を観察し、危険な域を脱したらボディバッグから身体を引き揚げて乾かす。通常15分もかからない。 現場でのアイスバスに、ボディバッグが理想的である理由はいくつかあるとシェン氏は話している。「安価で、手に入りやすいことです」と同氏は言う。そして、医療従事者はバッグの中の患者を見たり、触ったりすることもできる。 「水に浸かっている間も患者を観察できる、とても便利な方法なのです」
Jenny McGrath