『関心領域』ジョナサン・グレイザー監督にインタビュー。過去の悲痛な歴史と現在の至近距離を映し出す
また、監督のすべての決断は、今作を〝歴史もの〟としてではなく、今に焼きつけるために行われている。 「演出方法については、長い時間をかけて悩みながら決定していきました。撮影する前に(実在する)ヘスの家にも行って、庭を囲う壁が強制収容所の壁でもあったのを目撃した時に、人生で目にしたもっとも荒凉とした光景だと感じました。そこから撮影方法を考え始めたんです。大事だったのは、僕らは一家のある壁のこちら側にいなくてはいけない、ということ。自分たちも加害者に似ている部分があるのか検証してみるためにも。また、このテーマでこれまでに多くの作品が作られてきたけれど、この映画は現在を描いたものにしたかった。〝博物館〟を訪れたみたいにならないように。過去に起きた出来事を描いているから、我々のことじゃない、加害者と自分は似ていない。そう信じることもできるけど、本作ではそれをひっくり返したかったんです。カメラレンズの選び方も、映像のシャープさも、あえて鮮明な感じにした意図としては、今現在とあの時代には大きな違いはないんだと、示すためだったんです」 ●『関心領域』 5月24日(金)新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開 ©Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved. Text_Akemi Nakamura
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