【新発見】蚊に刺されない夏が来る!? 蚊の吸血を止めるメカニズム解明! 理研
研究の背景は?
編集部: 今回、研究グループが研究を実施した背景には、どのような事情があったのでしょうか? 久高先生: 蚊に刺されると、日本脳炎やマラリア、デング熱などの感染症にかかる可能性があります。研究グループは、メスの蚊による吸血行動の仕組みを明らかにし、吸血を抑制するようなことで、蚊による感染症の媒介を防ぐ新たな手法の開発につながる可能性に注目しました。 蚊の吸血を促進する物質として、血液に含まれるATPがあります。血液にATPは常に存在するので、吸血中の蚊はずっと吸血促進シグナルを受け取り続けることになります。蚊にとって長い時間吸血していると、気づかれるリスクを高くなってしまうので、血液の摂取によって腹部が膨らむことによる物理的な制御機構の確認が報告されています。ところが、腹部が完全に膨らまなくても吸血を止めることも知られており、ほかの制御機構の存在が示唆されていたものの、実体は明らかになっていませんでした。今回の研究グループの成果によって、フィブリノペプチドAが吸血を抑制する働きがあることが明らかにされました。
研究グループが発表した内容への受け止めは?
編集部: 理化学研究所らの研究グループによる発表への受け止めを教えてください。 久高先生: 蚊以外にもダニなどが媒介で発症する感染症は多く、重症化する病態もあります。これまでは、媒介する蚊やダニとの接触を予防することに重きが置かれておりましたが、今回の研究は接触した場合でも媒介の予防を探索するものであり、そのメカニズムの一役を担う成分を発見したことから、今後は媒介感染症の制御を図る上で臨床応用が期待されます。
編集部まとめ
理化学研究所らの研究グループは、哺乳類の血液中に存在する「フィブリノペプチドA」が、ネッタイシマカの吸血を停止させる作用を持つことを発見しました。研究グループは今後、フィブリノペプチドAによる吸血抑制のメカニズムを明らかにすることで、人為的に吸血停止を誘導する手法の開発や、蚊が媒介する感染症制御への応用が期待できるとしています。
監修医師:
久高 将太 先生(琉球大学病院内分泌代謝内科) 琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。