「ワイアード」と考える、生成AIと共に生きる2050年の未来予想図
GPT-4Vの“ビーマイアイズ(BE MY EYES)”は、カメラに写した物の情報を声で解説する、視覚障害者向けのサービスだ。カメラに写した食べ物の原材料をAIが分析し、サービス利用者のアレルギー情報を鑑みて食べられるか否かを教えてくれたり、買い物中にカメラに写した商品を声で説明してくれたりなど、視覚障害者の生活を大きくサポートする。
アーティスト兼研究者の徳井直生とトラックメーカー兼MPCプレイヤーのスタッツ(STUTS)らによるトークセッション「生成AI時代の『音楽のゆくえ』」では、テキストからサンプルを生成するツール“ニュートーン ゲン(NEUTONE GEN)”を用いてスタッツが即興で楽曲をつくり、披露した。サンプラーやターンテーブルが発明されたことでヒップホップというリミックスによる新ジャンルが確立したように、テクノロジーの発展は、楽譜も読めず、楽器も弾けない人たちにも音楽で何かを表現する術を与えてきた。人間の創造性と生成AIが生み出す偶然性との掛け合わせによって、2050年には、今はまだ予想もつかないような新たな音楽が生まれているかもしれないと思った。
「チャットGPT」を含め、生成AIのトレンドに乗り遅れていた筆者だが、「ワイアード フューチャーズ」の1日を通して最新トレンドをキャッチアップできただけでなく、AIとの向き合い方について、改めて思考を巡らせることができた。AIの画像生成技術がたった1年でも劇的な進化を遂げたように、動画や音楽などあらゆる領域で、生成のスピードやクオリティがますます向上すると考えられる。近い将来、生成AIの個人活用は当たり前の時代が来るだろう。「ワイアード フューチャーズ」は、自分の仕事や生活に生成AIやその他のテクノロジーを生かすヒントがたくさん散りばめられたイベントだった。
「ワイアード」とは
「ワイアード」は1993年にアメリカで創刊。メディアの根底に“闘う楽観主義”という思想を持ち、コンテンツを作るだけでなく、その価値を社会に実装するところまで手掛ける。松島倫明「ワイアード」日本版 編集長は同メディアのコンテンツについて、「未来を予想しているのではなく、未来の可能性を拡張している。未来の選択肢を増やすメディアでありたい」と11月に「WWDJAPAN」の取材で話した。