通勤の運転中にこぼれた涙、仕事と育児の両立に追い詰められ退職 共働きの35歳、起業して見つけた私の生き方
会社勤め経て企業、片付け支援の個人事業主に
長野県飯田市上郷黒田の金田雅(かなだみや)さん(35)は、会社勤めを経て起業した二児の母親だ。個人事業主「片づけレッスンコーチMiya(ミヤ)」として昨年8月から個人宅や会社を訪問し、依頼者と一緒に片付けながら整理収納のこつを伝授している。子ども部屋から相続を見据えた80代夫婦の自宅まで幅広く支援。公民館でも片付け講座を担当する。 【写真】「子育てや介護等をしながらの起業」をうたう、養成講座のチラシ
状況を変えようと始めた片付けが起業のきっかけ
起業のきっかけは2018年の長女の出産だ。夫と共働きで、当時は正社員の事務職とクラシックバレエの講師を兼業していた。そこに育児が加わり、体力的にも精神的にも追い詰められた。会社に向かう運転中、涙がぼろぼろとこぼれたこともある。 状況を変えようと始めたのが、元々好きだった片付け。思い切って物を手放し、何日もかけてこつこつと家中を整理した。すっきりとした部屋に立つと、頭の中も整理された気がした。会社勤めは辞める決断をした。
市の女性起業家養成講座で深める「横のつながり」
片付けで物を整理することを通じて心も整理できた体験を共有し、悩みを抱える人の役に立ちたい―と一念発起。片付け支援で起業し、経営も学ぼうと飯田市が力を入れている女性起業家養成講座に参加した。同じ目標を持つ女性たちと相談したり、情報交換したりして「横のつながり」を深めている。 不登校の子どもの母親から片付け支援の依頼があり、子どもと一緒に部屋を片付けたことがあった。母親から後日「(子どもが)久しぶりに友達を呼んで、遊ぶことができた」と連絡があり、この仕事に喜びを感じた。
自分の「道」を選んだ実感強く
会社員だった時、男女格差を肌で感じた。お茶くみは女性だけ、同じ部署で昇級するのは男性ばかり、長年勤める優秀な女性が役職に就けない…。当時は疑問を感じつつ何も言えなかったが、距離を置いた今は現状を「変えていきたい」との思いも芽生えた。 起業後は時間の使い方が自由になったが、5歳と3歳の子どもたちが頻繁に風邪をひき、仕事との両立は綱渡り。「核家族が増えているのに、市内の病児保育は1施設のみで定員6人…。女性の働きやすさは、いろんな面でまだまだ課題がある」と感じる。 ただ会社と自宅の往復だった会社員時代に比べて接する人の範囲が広がり、地域とのつながりも増えた。「自分で『道』を選んでいる実感が強くなった。それが楽しい」。新しい自分の生き方に手応えを感じている。 (藤 はな)