人口減少で加速する一極集中 都市から地方へ人口移動の転換は起こるのか
10月に総務省が発表した平成27年の国勢調査確定値で、大正9(1920)年の調査開始以来、人口減少に転じた日本。このまま人口が減り続けた場合、自治体としての機能を果たせない地方都市が出てくると危惧されています。果たして都市と地方の“人口格差”はどのようになると考えられるのでしょうか。過去の日本でも、人口のばらつきはあったのでしょうか。 静岡県立大学長の鬼頭宏氏(歴史人口学)が「東京一極集中は止まるか?-人口分布の歴史-」をテーマに分析します。
現代の日本では人口減少が進んでいる。減少それ自体、問題であるが、それ以上に困難を増幅させているのが、2つの不均衡である。第1は超高齢化であり、第2が都市部、特に東京首都圏への人口集中と、農山漁村における過疎化や集落消滅の恐れである。 国連の都市人口統計によると、パリ、ロンドン、ローマ、ニューヨークの人口が総人口に占める割合は概ね20%以下で、1970年以降、安定している。ソウルの場合も、1990年頃までは割合が上昇したが、現在は落ち着いている。それに対して東京(首都圏)の人口割合は年々上昇を続けていて、現在は、28%を占めている。日本ではどうして首都圏への一極集中が止まらないのだろうか。 年齢構成の不均衡は出生率が回復しなくても、出生率と死亡率が安定すればいずれ解消し、年齢構造は安定する(安定人口)。しかし人がどこに住むか、どこへ移動するかは、簡単にコントロールすることは困難なので、解決が難しい。日本創生会議は、少子化と人口流出によって、2010年から30年間のうちに20~39歳女性人口が50%以上減少する「消滅可能性」自治体は896に上ると、推計している(ただし福島県を除く)。 今回は、人口の地域分布と都市人口の歴史的変遷を概観することによって、現在の日本が抱えている地理的な人口分布のアンバランスについて考えてみたい。