ヨシタケシンスケさんインタビュー【前編】「みんながみんな、夢や意見があるわけじゃない」
子どもに聞かれても、うまく答えられない! 自分もよくわかってない!? ヨシタケシンスケさんと考える「はたらく」ってなんでしょう?
なぜ私たちは、働かないといけないの? お金のため? それとも夢のため? 実はあまりわかっていない、“はたらく”意味。ヨシタケさんは、どう答えてくれるでしょう。 ●ヨシタケさんってどんな人? 1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。独自の視点で描かれる、絵本、装画、イラストエッセイなどが大人気。高校2年生、小学校6年生の息子の父として、時々は悩むこともある。 ●ヨシタケシンスケさんのおしごと年表 1998年 会社員時代 ゲーム会社に就職。勤務時間中にもかかわらず落書きばかり描いていた。半年で退職 1998年 クリエイティブユニット時代 「パンタグラフ」の名称で、立体造形を得意とするユニットとして人気を集める 2013年 絵本作家時代 編集者から声をかけられ、40歳で初のオリジナル絵本『りんごかもしれない』を出版
新刊が出ました! 『おしごとそうだんセンター』(集英社)
「おしごとって、何?」「どうやってえらべばいいの?」「向いてるおしごと? たのしいおしごと?」など、地球に不時着した宇宙人の目を通して語られる、ヨシタケさん版ハローワークストーリー。
やりたいことがなくても、いいじゃないか
「みんながみんな、夢や意見があるわけじゃない」──ヨシタケシンスケさん 地球に不時着した宇宙人がやってきたのは、ちょっと風変わりな職業相談所。彼は相談所のお姉さんに相談しながら、この星で生きていくこと、働くことの意味を考え始める……。新作『おしごとそうだんセンター』は、どこかぼんやりとした、あるいは凝り固まったイメージで語られがちな“おしごと”を、ヨシタケさんならではの視点から問い直した絵本です。しかもここで紹介されているおしごとというのが、なんとも個性的というか独創的なものばかり。なりたい職業に就くためにすべきこと、世の中にあるさまざまな職業の紹介、などは一切なく、描かれているのは、もっと“はたらく”の根源に迫ること。大人になった私たちもいま一度、「いったい自分にとって、働くってどんなこと?」と、考えたくなる一冊です。 「そもそも僕自身がなんていうかな、仕事というものに悩み続けてきたというのがあるものですから。先に言っちゃうと、この本は、『こんな仕事をしたい』とか『こんな人になりたい』とかいう、夢を持っている人向けの本ではないんですよ。僕は、小中高となりたいものがなかったんですね。これという夢がなくて、自分の意見も特になくて。なんとなく、言われるがままに生きていた。でも急に、やっぱり進路を聞かれるわけですよ。先生とか親とかに。『将来はどう考えているんだ?』って」 「やたらと夢の提出を求められたのは大人がラクしたいだけだったんだ!」──ヨシタケシンスケさん 子どもに夢をたずねるとき、大人が期待しているのは、「宇宙飛行士!」「幼稚園の先生!」などのそこそこロマンのある、それでいて職業として成立する答え。 「それを答えられない自分がいやで、夢を語れないってことがすごくコンプレックスだったんですね。こんな僕なんかからすると、しっかり夢を持って、『俺はこれになりたいからこれを頑張るんだ』なんて言っている友達が、それはもう、光り輝いて見えるわけです。ああじゃない自分っていうものが、なんかよくないように思えて」 だがしかし、と大人になったヨシタケさんは気付きます。 「数十年たって今、『なんであんなに夢の提出を求められたんだろう?』って考えると……あれは大人側の事情だったんだ!って。ほら、ラクなんですよね。『○○になりたいです!』『よし、じゃあ頑張れ!』って言えば終わるでしょう? 『夢が決まってません』って言われちゃうと、一緒に考えなきゃいけないんで、めんどくさいわけですよ。そもそも、よく考えると自分が何になりたいのか、何がしたいのかなんて、人に言う必要ないんですよね。そんなの答える筋合いはないんです(笑)」