ウクライナ国産の安価な軽量機が長距離ドローンに変身 ロシア領内への攻撃は続く
軽飛行機改造ドローンは「遅い巡航ミサイル」のように使える
このシステムは「パイロットがするのと同じように、操縦輪(ヨーク)を『つかみ』、方向舵(ラダー)やブレーキのペダルを押し込み、スロットルを動かし、適切なスイッチを入れ、ダッシュボードの計器類を読む」と米空軍の研究機関、空軍研究所(AFRL)は説明している。このシステムはまた「GPS(全地球測位システム)や慣性計測装置などのセンサーを利用して状況認識や情報収集も行う。コンピューターがこれらのデータを解析し、フライトを最適に制御する方法を決定する」ようになっていた。 「セスナやパイパーのような一般的な航空機を手早く、低コストで無人航空機に転換し、自律的な任務飛行をさせ、元の有人構成に戻せると想像してみてください」とAFRLの科学者であるアロク・ダスは語っている。「これらすべてを、航空機に恒久的な変更を加えずに実現できるのです」 ウクライナのA-22改造ドローンの場合、自律制御機器の取り外しが問題にならないのは明らかだ。このドローンはいわば低速の巡航ミサイルのようなものであり、基地に戻って来ることは想定されていない。 そして、巡航ミサイルとして使うにはA-22は実にお買い得だ。新しい制御機器や積載物の爆薬込みでも、A-22のドローンを1機つくるのにかかる費用はせいぜい20万~30万ドル(約3000万~4500万円)だろう。 これは1発50万ドル(約7600万円)ほどするウクライナ国産の巡航ミサイル「ネプチューン」よりも安い。ウクライナが英国から供与された1発約300万ドル(約4億5000万円)の巡航ミサイル「ストームシャドー」と比べると格段に安価だ。 おまけにA-22の1000kmという航続距離は、ネプチューンや、ウクライナ軍で使われているバージョンのストームシャドーの射程の3倍以上となる。 最大の欠点は速度が遅いことで、頑張っても時速200kmほどしか出ない。ストームシャドーの飛翔速度は時速1000kmに達する。 原理的には、A-22ベースのドローンはロシアの防空に対して脆弱ということになる。だが実際は、ロシアの防空は広大な国土に薄く広がったかたちになっている。ウクライナが、この安上がりな軽飛行機型ドローンをロシア領内で徘徊させ、攻撃する余地はたっぷりあるということだ。
David Axe