華道家で写真家の池坊専宗さんが語るいけばなの歩み「花では身を守れないけど」
京都政経文化懇話会の11月例会が19日、京都市中京区のホテルであった。華道家で写真家の池坊専宗さんが講演し、人と花との関わりや、いけばなの歩みをひもといた。 仏教伝来とともに、仏に供えるために花を生け始めたのがいけばなの起源とされる。池坊さんは「海外からの刺激で、花が暮らしに入ってきた」とルーツを説明した。平安貴族は持ち寄った草花を歌に詠んで競う「花(はな)合(あわせ)」を楽しみ、文化や教養も重んじた武家は床の間に掛け軸や花を飾った。 応仁の乱では、池坊の代々の家元が住職を務めた六角堂に人が集まり、死者も弔った。池坊さんは「花では身を守れないが、見つめて触れれば心がひととき癒やされる」と当時を思いやった。 16世紀に池坊専応がまとめた「専応口伝」の要点を「美しさだけでなく、自然の草花の姿、葉や枝、幹も尊重する。花が咲き、衰えていくという命の循環を大事にする」などと紹介し、今も継承されていることを明かした。明治以降は西洋文化や現代美術の影響もあって自然の姿から外れていったが、新型コロナ禍を経て揺り戻しているという。 池坊さんは最後に、ウクライナにも華道家元池坊の支部があり「雑草を摘んでシェルターの中で生けて心を癒やしている」と話し、京都でも「いけばな展などの機会に花に触れて、暮らしを豊かにしてください」と呼びかけた。