伊達政宗の生涯、10年かけ描いた漫画完結…千葉真弓さん「政宗は本当にしぶとくて諦めない人」
最新研究や出典元明記で「コマ一つに込めたこだわりを」
仙台藩初代藩主・伊達政宗(1567~1636年)の生涯を描いた漫画「独眼竜政宗」(プレスアート)の完結3巻が発売された。仙台出身の作者・千葉真弓さん(61)が10年かけ、最新の研究や史料を基に、政宗の実像に迫った。千葉さんは「日本中にある史料を漫画に翻訳したようなもの。手紙や文書から、家臣との関係や在りし日の姿が浮かび上がってきた」と語る。(川床弥生) 【写真】最新技術で作製された伊達政宗の復顔像
2011年9月から21年3月まで、新聞で連載されたものを書籍化した。当初は子供向け新聞での連載だったため、小学生でも読みやすいよう、フルカラー、1ページ1話で話をまとめた。仙台市史などを基に、市博物館や専門家の協力を得ながら、執筆を始めた。
調べていくと、政宗が優れた当主になった背景には、父・輝宗、叔父の留守政景ら、親世代が鍵を握っていたことがわかった。輝宗は政宗に、当主になるための文武両道の英才教育を施していた。「これまで輝宗は政宗の前座扱いだったけれど、実はすごい戦国大名だった」と驚いたという。ルーツから描く必要があると考え、曽祖父・稙宗と祖父・晴宗の確執など、伊達家の父子相克の系譜にも触れた。
登場人物のキャラクター設定は、ほぼ史料に残るまま。側近の片倉小十郎、いとこの伊達成実らとの関係性も、当時の手紙や日記のエピソードから読み取れた。「(叔父の)留守政景あての手紙では政宗が甘えている。『鷹(たか)を貸してください』とか」
1巻では誕生から南奥州の覇者になるまでを、2巻では豊臣秀吉らとの駆け引き、3巻では仙台藩初代藩主としての奮闘を描いた。政宗を中心に、その時代を生きた武将や女性たちの姿を丁寧に描き、群像劇として345話にまとめ上げた。
地図や見栄えにもこだわった。地図は史料から分析し、一目で陣の配置や進軍の推移がわかるように腐心した。城攻めのルートを、現代の地図に落とし込んだ「城攻めルートマップ」も一から作成。合戦場面も、史料の人数を数えて正確に書き起こし、「亜空間で戦うヒーローではなく、地べたを踏んで生きていた人たちだから」と、現地に取材に行き、地質まで絵で再現した。陣羽織などの着衣もデザイン。「楽屋」コーナーには解説を記載し、膨大な情報を網羅した。