【山中伸弥×羽生善治】「運命の出会がなくなる…」天才2人が予言する「AI結婚」が蔓延るヤバすぎる未来
想像を絶する速度で進化を続けるAI。その存在は既存の価値観を破壊し、あらゆる分野に革命をもたらしている。人知を超えるその能力を前に、人類はどう立ち向かうべきなのか。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 それぞれの分野の最先端を歩む“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が人間とAIの本質を探る『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋して、新時代の道標となる知見をお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第21回 『日本人には簡単なのに…羽生善治が語る、「最新AIも超えられない」高すぎる「日本語の壁」』より続く
理由はわからないけど、こっちがいい!
山中 結婚する時にも、相手の情報をすべて教えられて、「この結婚の成功確率は51パーセント」とか言われても(笑)、どう判断していいのかわからない。やっぱり何か勘ってあるじゃないですか。これはまぁ成功確率が低いことはわかっているけど、何か行けそうな気がする、とか。 羽生 AIが基本的にやっているのは結局、確率的に精度を上げていっているだけです。答えそのものが正しいわけではなくて、前よりも少しは良くなっていることを繰り返している、ということですから。 山中 「これは運命の出会いだ、だから少々のことは我慢しよう」と思うからこそ、うまいこといく場合もあると思いますけど、そこでAI君が登場して「いや、運命の出会いでは決してありません」(笑)と冷静に分析して言われると、そこで終わっちゃう。 羽生 以前、テレビで見たんですが、フェイスブックに自分のプロフィールを記す欄がありますね。そういう情報でみずからお見合い相手を調べていって、「この人がいちばん合いそうだから選んだ」という人が紹介されていました。それはそれですごい選択だな、チャレンジだなと思いました。やっぱり情報だけで割り切れないものは、必ずどこかにあるとは思います。
常識を覆す「暗黙知」
山中 治療法にしても、この病気の場合、一般的にはこの治療がいいのはわかっているんだけれど、何かわからないけれど、この患者さんの場合はこっちのほうがいいと感じる――そういう判断は、まったく理由を説明できないけれど、けっこう当たることもあります。 そういった医師の直感とか勘のようなものが、実はあらゆる情報をもとに無意識で判断していることだとしたら、AI君も同じように判断してくれるかもしれないですけど、そういうことができるのかな。 羽生 よく「暗黙知」と言われます。つまり医師や技術者が、自分でできていることだけれども、どうやっているかは自分でも説明できない、なぜこうしているかはわからない。そういうことは、けっこうありますよね。そういう暗黙知に属することがAIにできるかどうか。結局、プログラムに書かなければいけませんからね。それは、これから先のすごく大きなテーマになりそうな気がします。 山中 僕たちの日々の決定や決心が、もし数値化できるような情報だけで決められているんだったとしたら、何か面白くない(笑)。説明つかない部分もあってほしいなと思いますね。 『 「3つしかない」ノーベル賞科学者・山中伸弥が明らかにする、意外過ぎる「成功者」になるための裏ワザ』 に続く
山中 伸弥(京都大学iPS細胞研究所所長)/羽生 善治