東大が“文理融合型”の新課程設立へ “これを学んだ”が就活時に言いづらく? 夏野剛氏「企業はGPAを聞くべき。サークルとバイトの話はもういい」
■「“学んだ学生がどういう道に進むか?”という出口の提案を」
増田氏は、「なんちゃって文理融合」は簡単だと指摘し、「文理協業」を提唱する。「文理融合は、ミルクとコーヒーが混ざってカフェオレになるような、新しい何かが出来上がっていく幻想を抱かせかねない言葉。そうではなく、1つのプロジェクトの中で、いろんな人が自分の得意技を持ち寄って、共通のゴールに向かって作業をするという、作業タスクのデザインの仕方だったらできると思う」。 また、そのためには広い視野と柔軟性が必要だと言う。「目配りがきちんとできるリーダーの存在が大事。いろんな学問分野の先生が集まると、バラエティのある科目が並ぶ。学生はたくさんある小鉢から好きなものを食べていくんだけれども、“あなたが食べたのは何料理ですか?”と聞かれた時、トータルなパッケージとして答えるのには困ってしまう。狭い専門性ではなく、いろいろなものが組み合わさって1つ成し遂げたという形にすることが大事だ」と述べた。
さらに、「日本の若い人たちは“専門性を身につけなきゃいけない”という、一種の脅迫観念があるのではないか」とも危惧する。「就職の面接で“何を学んだんですか?”と聞かれた時、学生も“◯◯学を学んでます”と答えたい。ところが、文理融合を謳う学部だと、“◯◯学部の△△学のゼミにいました”という歯切れの悪い答え方になるだろう。身につけたことを、自信を持って言えればそれでいいと思うが、“社会に役立つ感のあるような学問のほうが人材アピール力がある”という風潮。それは産業界に理由があると思う。逆に言えば、大学が日本社会に求められているものが何なのかに関わってくる」と投げかけた。 夏野氏は「僕は近畿大学に情報学部を作ったが、理系とは言わない。全社会に共通する課題を解いていかなければならないものだからだ。今新しくできる学部はけっこう文理融合型が多いが、認可を受ける時に授業のラインナップなどいろいろ文科省から聞かれる」と説明。