オスプレイが去っても収まらず…米軍・横田基地の周辺住民を悩ませる「深刻すぎる騒音問題」
米軍横田基地は、東京都の5市1町に面する総面積7㎢の広大な敷地を誇る。 同基地広報部の資料によれば、スーパーハーキュリーズやヒューロンなどの航空機、ギャラクシーやグローブマスターなどの中継機、そして昨年までは輸送機オスプレイなどが横田基地に飛来。近隣住民たちはながらく、騒音や振動に悩まされてきた。とくに’18年に配備されたオスプレイの爆音は凄まじく、周辺住民達は抗議を続けている。市民団体は米軍機の飛行禁止を求めたが、補償金の支払いに留まり、その願いは退けられた。 【画像】すごい…!横田基地で接写されたオスプレイ飛行の瞬間 筆者は横田基地に面する都市のなかで、福生市と昭島市上空の飛行ルートを取材した。昨年11月、鹿児島県の屋久島沖でオスプレイが墜落して以降、横田基地周辺での飛行は確認されていないというが、何度か現地に足を運び、住民の声に耳を傾けていると「最近、また騒音が気になるようになった。オスプレイが飛んでいるのではないか」という疑念が聞こえてきた。 福生市の基地・渉外担当に話を聞くと、「現在(5月初旬)オスプレイが飛んでいるという話は入ってきていない」と言う。担当者はこう続けた。 「それでも騒音はあります。市には航空騒音に対しての苦情・問い合わせが多く寄せられています」 ただ、福生の基地周辺を歩くと、騒音問題に対しての受け止められ方は二分されていると感じた。「昔のほうが騒音は大きかった」「今はあまり気にならない」という声もあれば、「現在進行系で、朝の騒音には強いストレスを感じる」という意見もあるのだ。市民団体が活動する公園に足を運ぶと、生まれも育ちも福生だという60代男性がこう明かした。 「福生のこの辺り(国道16号付近)は、滑走経路的に比較的騒音はマシなエリアだと捉えています。実はこの周辺は、一軒家も持ち家ではなく、ほとんどが賃貸物件なんです。そんな背景があって、この辺りのマンション、一軒家とも、国から支援を受けたオーナーさんが防音・騒音対策をほぼ完璧に行っている。だから、『気にならない』という声もあるのでしょう。反対活動を行っている人の大半は高齢者。世代間で、騒音の受け止め方に温度差があります」 防音・騒音対策が施された一軒家にも案内してもらった。中に入ると、窓ガラスは二重になっており、エアコンも完備。ただ、それでも不都合は感じるという。 「昔と違って、夜の騒音に悩まされることはなくなりました。ただ、朝から日中にかけて騒音はあるし、部屋も揺れる。だから窓を開けるという習慣が私たちにはあまりないんです。夏はエアコンに頼ることになる。生活のしづらさはどうしてもありますね」(住民の男性) 横田基地周辺住宅防音工事補助事業実績の資料を確認すると、圧倒的にその数字が多いのが昭島市だ。’22年時点で9789件と、2位の日野市と比べて3000件以上と、大きな開きが生じていた。補足となるが、いずれの市町も1975年から2010年にかけてまでの工事が9割以上を占め、今では新規工事は年に数件程度となっている。 昭島市で特に飛行機騒音に対する反対意見が強いのが「昭島田中町住宅」だ。東京都住宅供給公社が運営するこの場所は、30のマンションが並ぶ大型団地で、しっかり防音対策も施されているという。20年以上、昭島田中町住宅で暮らしているという40代女性が明かす。 「いつまで経っても騒音には慣れませんね。『ゴーッ』という音が部屋に響きわたってテレビの音は聞こえなくなりますから。毎日ではないけど、朝7時頃から夜は20時まで、時には21時を回った後でも爆音が聞こえたりします。軍事演習をしているのか……。軍用機がマンション近くを旋回しているから、洗濯物を干すのにも気を使います。部屋の気密性は高いですけど、生活への影響は小さくありません」 30年以上昭島に住んでいるという60代男性は、一昔前と今をこう比較した。 「慣れもあるかもしれませんが、昔のほうがうるさかったですよ。かつて横田に飛来していたファントムやギャラクシーという飛行機は離陸前に吹かすエンジンがとんでもない音を出していた。朝の7時頃だったので、夜遅くまで働いて午後出勤する人はツラかったと思いますね」 10名程の住人に聞いたなかで、ほぼ全員が「騒音は避けて通れない」と口を揃えたのが印象的だった。 田中町住宅に住む60代女性は、こんな恨み節を口にした。 「オスプレイが来なければいいというものではない。オスプレイが飛んでいなくても大きな騒音はある。それが現実です。私たちはこの状況と向き合っていかなければならないのです」 具体的な事故原因が公表されないまま、3月からオスプレイの段階的な運用が再開された。基地の街に住む人々は危機感を強めている。 取材・文:栗田シメイ(ノンフィクションライター))
FRIDAYデジタル