倒壊ビル解体「やっと前に」 輪島で着手、年度内に完了 住民、復興進展願う
●7階建て本体は11月から 元日の能登半島地震で倒壊した輪島市河井町の輪島塗老舗「五島屋」のビルについて、市は7日、公費解体に着手した。倒壊を免れた3階建ての別棟から取り壊しを始め、11月中にも市道にはみ出している7階建て本体の解体に取り掛かる。工事は年度内の完了を目指す。街中で9カ月余り、鉄筋コンクリート造りのビルが横たわる状況が続いており、住民から「やっと前に進む」と復興の進展を願う声が聞かれた。 【写真】ビル本体の工事に先立ち、別棟の建物内の荷物を片付ける業者 ●上層部は年内撤去 解体作業は3階建て別棟を取り壊して重機を置くスペースを確保した上で、ビル本体の工事を進める。初日は別棟の建物内の片付けが行われた。国土交通省が倒壊原因を究明するためビル基礎部を調べており、市は国交省の調査に影響がない本体の上層部から段階的に工事を進め、3~7階はは年内の撤去を目指す。 ビルは輪島塗老舗「五島屋」が社屋として使い、1970年代に建てられた。倒壊により隣の居酒屋がビルの下敷きになり、男性店主の妻と長女が犠牲になった。地震に伴う大規模火災に見舞われた「輪島朝市」の近くに立地する。 近くに住む升井幸子さん(72)は「ようやく工事が始まった。これで気持ちが前に進むかもしれない」と語った。地震で自宅が全壊し、5月から応急仮設住宅で暮らす大野由美子さん(57)は「通勤で倒れたビルを目にするたび心が痛む。早く撤去してほしい」と話した。 ●国交省が原因調査 倒壊を巡っては、基礎部のくいの破損や地盤が原因ではないかと指摘されており、男性店主が倒れた原因の究明を求めている。国交省が解体工事に合わせて調査を進めるが、解体の際、基礎部や地盤の状態が変化して調査に影響する可能性があり、市と国交省が工法を検討してきた。 市がビルの上層部から段階的に「輪切り」にする形で取り壊し、ある程度解体した後、国交省が基礎部などの状況を調べる。