やせ薬に供給難リスク、米中関係緊張で-超党派議員による法案が鍵に
(ブルームバーグ): 米国などで人気となっている減量薬や糖尿病治療薬は、中国バイオテクノロジー企業への依存度軽減を図ろうとする米超党派議員の動きに巻き込まれつつある。
製薬大手イーライリリーの「ゼップバウンド」と「マンジャロ 」に使われる有効基剤の多くは、中国の無錫薬明康徳新薬開発(ウーシー・アプテック)が生産している。同社は、米議会で現在議論が進んでいる「バイオセキュア法案」の矢面に立たされている主要企業のうちの1社だと、事情に詳しい関係者が明らかにした。同法案には、外国敵対勢力との関係が懸念されるバイオ企業の米国事業を制限する内容などが含まれる。
サプライチェーンにおける重要性もさることながら、無錫薬明康徳の公開情報によれば、同社は世界の大手製薬会社20社と取引をしている。超党派議員によるバイオセキュア法案が現在の青写真通りに法制化された場合、食欲を抑制する「GLP-1受容体作動薬」から先進的ながん治療薬まで、すでに供給不足に陥っている医薬品はさらに製造が困難になるとみられる。
無錫薬明康徳と同社の姉妹会社である薬明生物技術(ウーシー・バイオロジクス)は、米国の規制当局に承認された製造施設を持っている。もし代替サプライヤーが必要となれば時間のかかる承認プロセスが必要となるだけに、これは重要な意味を持つ。また両社は広範な研究開発なども行っている。
製薬業界ロビー団体BIOの幹部ニック・シプリー氏は、無錫薬明康徳のような医薬品開発製造受託機関 (CRDMO)は「原薬やバイオ材料をどこで調達するかだけにとどまらない役割を担っている」と指摘。「スイッチを入れて動かすような単純な話ではない。こうしたサプライチェーンの混乱は明らかに供給不足につながる恐れがある」と語った。
米超党派議員は現在、バイオセキュア法が成立した場合に国内の医薬品供給に与える初期的な打撃を抑えることも視野に入れている。