印象派絵画のような映像で綴る人生讃歌、映画『エタニティ 永遠の花たちへ』
役者たちの台詞はほとんどなく、ナレーションと音楽で綴られている。「ユン監督の美に関して何の疑いも持たずすべてを委ねた」というロランに対し、肘の角度や腕の動きに機械的正確さを求められたベジョに至っては現場で監督と「対立した」という。そして「私はただセットの一部になったの。何かになろうとさえしなかった」と話すのはトトゥ。赤ん坊は見つめて、ただ愛するだけ、子どもたちとは絆を作り上げ、彼らが自信を感じられるようにしたという。 三人三様の取り組み方だったが、完成作品を観て「圧倒されて、尋常ではなくいくらい感動した」と対立したベジョにさえ言わしめた。
俯瞰したカメラワークが、精霊の視点を生み出す
同作で印象的なのは俯瞰するようなカメラワークが、独特で不思議な臨場感を生み出している。庭の木の陰から、邸宅の柱の陰から、そこに住まう人々をただ見守る精霊の視点というべきか? それとも、とてつもなく大きくて揺るぎない愛の宿る神の視点なのか? こうした映像の美しい映画が陥りがちな退屈さはまったくない。急ぎすぎず、ゆっくりすぎずに展開する人々の人生が一枚のタペストリーのように織り込まれている。それは幸せな結婚や子供の誕生もあれば、去りゆく人への涙の場面でもある。
映し出されるもの、すべてが美しい
柔らかく降り注ぐ光を捉えた映像はすべてが美しい。川面に浮かぶボートで妻のためにギターを弾く夫、昼下がりの邸宅内でのバレエのレッスン、真夏の庭で水を掛け合う家族など、印象派の絵画の世界から飛びだしてきたようなうっとりするような光景にいくつもめぐりあえる。 女性の生き方、家族の在り方が問われる現在、登場する3人の女性に共感を得られるか得られないかは正直わからない。しかし美しい映像に綴られた、紛れもない人生讃歌がここにある。 『エタニティ 永遠の花たちへ』9月30日(土)シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー 監督:トラン・アン・ユン 『ノルウェイの森』、『夏至』、『青いパパイヤの香り』 出演:オドレイ・トトゥ 『ココ・アヴァン・シャネル』 / メラニー・ロラン 『イングロリアス・バスターズ』 / ベレニス・ベジョ 『アーティスト』 配給:キノフィルムズ (C) Nord-Ouest