<春はばたく>第92回センバツ注目校/5 天理(奈良) 自由な環境、選手飛躍
<第92回選抜高校野球> 今年のセンバツ行進曲「パプリカ」が流れる中、打撃練習で快音を響かせる。昨秋の近畿王者の天理は曲をかけながら練習をしている。高校野球では珍しい光景だ。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 音楽をかけ始めたのは、中村良二監督(51)が主将を務め、夏の甲子園で初優勝を果たした1986年。前年のセンバツで中継プレーの際にかけ声が通らなかった反省と「プロ野球みたいにやりたかった」との本音もあって、当時の橋本武徳監督(75)に提案した。 強豪校ではスパルタ指導が珍しくなかった時代でも、練習に自由さがあった天理。音楽に限らず、選手がやりたいと提案した練習は必ず行っていた。選手の発案で1日練習が午前中で終わる日もあり、中村監督は「午後が休みと分かると、午前中、一生懸命やって中身の濃い練習ができる」と振り返る。 その経験からプロ野球の近鉄、阪神で11年間プレーした後、天理大監督などを経て2015年8月に就任すると、「選手がどれだけ気持ちを持って練習するか」を重視して指導している。「自由な時間を作りたい」と、練習の最後30分間は自主練習の時間を設ける。寮に戻ってから休むのも、自主練習をするのも、選手が自由にできるように、夕食は選手がそろって食べなくていいようにしている。 選手が自由に使える時間を与える方針が昨秋は飛躍につながった。2学年上のチームは太田椋(オリックス)を中心とした堅守で、1学年上は打線が持ち味だったが、主将で三塁手の下林源太(2年)は「僕らには強みがなかった」と危機感を抱いていた。選手たちで話し合って朝の自主練習を週2回、全選手が参加し、1時間弱で素振りや捕球練習などに取り組むようになった。夜も1時間半、個人練習を行うのが日課となり、急速にチームは力をつけた。 5年ぶりのセンバツに向け「一つ一つの練習をしっかりやりきって大会に臨みたい」と下林。奈良3位から近畿優勝という快進撃の再現を狙い、天理の選手たちは練習の虫になっている。【安田光高】=つづく